ヒット商品・トレンドから読み解く、インサイト最前線 #01

「令和」新年号キャンペーンが盛り上がりに欠けてしまった理由が、「年越し」との比較で見えてきた

消費者が「元号越し」に感じた価値とは?


 ソーシャルデータに見られる特徴を私たちなりに纏めると、次のように分類できました。
 
  • 「元号越し」は、「(平和等に)感謝」「ソーシャルへの言及」「時代」。
  • 「年越し」は、「(カウントダウン等で)騒ぐ」「パーソナルへの言及」「刹那」。

 すなわち、静と動、平穏と喧噪、社会と個人、みんなと私たち、歴史と現在…どちらかと言えば「元号越し」と「年越し」は、対比されるようなキーワードだと分かりました。

 「年越し」は年に1度必ずやってくる区切りですから、ハロウィンや大型フェス、あるいは誕生日のような感覚に近いのかもしれません。一方で「元号越し」は、同じ区切りでも30年ぶりですから、心のどこかで平成という時代に居た私を振り返ってしまうのかもしれません。

 以上から、「元号越し」に感じられる価値は【平和だった時代に想いを馳せて穏やかになりたい】。それに対して、「年越し」に感じられる価値は【刹那的に気分を上げたい】ではないかと洞察します。
 

新元号「令和」キャンペーンを成功させるためには


 「元号越し」に感じられる価値から見ると、令和キャンペーンに対する不満は「新年あけましておめでとう!的な年越しのノリと一緒だから、平和で穏やかな時代に感謝する気持ちが持てない」ではないでしょうか。

 みんなが参加して盛り上がっていた令和キャンペーンと言えば、例えばTwitter社の「#平成を語ろう #ハロー令和 キャンペーン」ではないでしょうか。4月30日の朝にメルマガが届くと、色んな人の元号越しインサイトが揺さぶられて、大勢の人が平成に対する感謝をtweetし大成功を収めました。盛り上がった背景には、時代に対して感謝できる「装置」が仕掛けられていたからだと推察しています。
 
https://blog.twitter.com/ja_jp/topics/events/2019/Hello_Reiwa.html
#平成を語ろうハロー令和

 つまり、「これまでも、これからも、みんなで穏やかで平和な時代を過ごしませんか?」という気持ちを共有できるようなキャンペーンは、元号越しに対するインサイトを捉えて「そうそう!」と共感して貰えるのではないでしょうか。

 ただし、こうした平穏なトーンの方が、元号越しの今の時代を暮らしやすい、楽ができるという人間の「デビルな一面」を忘れてはいけないでしょう。

 中国戦国時代の儒学者・孟子は「水の低きに就く如し」(水が低いほうに流れるように、自然のなりゆきは止めようとしても止められない)と説きました。平穏が楽だからそうしているだけで、その逆の喧噪は「今じゃないよね」と感じられている…と受け止めれば、現状をより複眼的に把握できるのではないかと私たちは考えます。
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