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新・消費者行動研究論

「SNSの普及で、消費者の意思決定プロセスが循環型になっている」慶應義塾大学 清水聰教授

消費者行動研究の価値とは何か

 マーケティングにおいて、「消費者行動論」といわれる学問の守備範囲は広い。消費者の行動に関するものは何でも含まれるから、経済学に始まり、心理学や社会学、文化人類学、最近では脳科学などもその範疇だ。

 そんな中、研究の中心にあるのが、消費者の意思決定プロセスの解明である。意思決定プロセス、などと仰々しく言うと難しそうだが、要は消費者が商品を購入するまでにどのような情報に触れ、何を考え、候補の中からひとつに絞り込んで購入したのか、その流れを明らかにすることである。

 古くは広告関連で利用されてきた「AIDMA」理論、最近では「カスタマージャーニー」理論も、広義の意味ではこの範疇に入る。学問的には、1960年代から連綿と研究されてきた、息の長い研究領域である。

 意思決定プロセスの研究が、これだけ長い間研究されてきたのには理由がある。そのプロセスを解明することが、企業のブランド戦略や価格戦略、チャネル戦略やコミュニケーション戦略などの、いわゆるマーケティングの基礎である4P(プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション)を策定していく上で大いに役立つからだ。
 
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 実際、私自身さまざまな企業との共同研究から、強いブランドは、消費者のブランド認知の段階から購買段階に至るまで、消費者に届くメッセージがブレないこと。意思決定の段階を追ってさまざまな情報に触れながら購入する商品を決めた人は、価格だけで感覚的にパッと購入した人と違ってブランドスイッチしにくいこと。意思決定の途中で触れるメディアの違いが、購買後の満足の違いに影響することなど、多くの知見を導くことができている。実務との接点として利用価値の高い研究といえるだろう。

 この意思決定プロセスの研究が、今、SNSの登場で新たな展開を求められている。
 

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