令和女子の解体新書 #03
メルカリが「買う基準」を変えた、コスパ2.0時代のリセールバリューの威力
ポストフリマアプリ時代の「コスパ 2.0」
リセールバリューは、いわば交換可能性が高いものほど高くなる。モノの価値には機能価値と交換価値があるとされるが、まさに後者が深く関係しているわけだ。ブランド物のバッグは、前者については他のバッグと大きく変わらないが、後者が大きいからこそ、例えばエルメスのバーキンなどは100万円以上の値がつく。
筆者の仮説では、交換価値の重要性の高まりは、「流行っている」ことの共通認識がスマホ/SNSによるコミュニケーションによって加速して形成されたことが関係している。そのスピード感がリセールバリューの適切な値付けに関連しているはずだ。
コストパフォーマンスは、支払った費用(コスト)と、それにより得られた能力(パフォーマンス)を比較したものだ。近年の若者消費文脈だと、消費の勢いがないので、モノを買うときはコスパ重視の傾向があると言われる。
その点はそうだとしても、ここまでの論旨から、現在だけでなく「これから」も視野に入れた価値づけが求められているはずだ。リセールバリューを念頭に置いたモノの価値づけとコスパ観が根付いていくと筆者は考える。
コスパは、価値と価格の比率ではなく、価値の継続性と価格の期待値の比率へ=リセールバリューを前提とした「コスパ2.0」へ。これがフリマアプリ普及後の私たちのコスパ感覚と言える。
例えば、「FR2」というアパレルブランド――筆者も個人的に敬愛しており、原宿の直営店でトップスを買ったことがある――は、日本や海外の若者に人気だが、その石川涼社長の着眼はとても面白い。
リセールバリューがブランド価値にも関係するため、決して値引きはしない。値引きは、売れないブランドだと公言するようなもので、交換価値を下げてしまうのだ。また、SNS時代に映えるようなものこそが、いまみんなが求めるものに他ならない。そこで、着ているときに思わず撮ってシェアしたくなるようなデザインを特徴としている。
かつて耐久消費財の普及が一巡したとき、機能価値から交換価値への拡張が謳われた。デザインやブランディングなどが花盛りとなり、ラグジュ アリー産業の発展がもたらされた歴史がある。
現代では、そのような機能価値/交換価値の対比はそのままに、スマホ時代ならではの価値の展開が見えてきているのではないか。それを考えるためのひとつの切り口として、「コスパ2.0(新しいコスパのありかた)」は有益なコンセプトとなるだろう。
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