令和女子の解体新書 #07
“投げ銭”だけじゃない。令和の若者が「一般人のライブ配信」にハマる理由
「まじで死にたい。」「いま超落ちてる。」リスナーの声
例えば、気分が落ち込んだリスナーが入室してきます。「まじで死にたい。」「今超落ちてる。」そんなコメントに対して、配信者は「どうした?」と優しい言葉で慰めます。
一緒に聞いている人たちも「元気出して!」「大丈夫?無理しないでね。」などとアドバイスをします。
何をコメントしても、配信者は基本的に無視しません。すべてのコメントを拾ってくれます。そこにまた、無視されていないという安心感があるのです。
悩みだけでなく、今日食べたものなど他愛のない話を約2時間話すこともあります。また、リスナー同士が仲良くなってアプリ内の友だちが増えることもあれば、リスナーがゲストとなりライバーとその場で電話(=コラボ)でき、その会話を聞くこともできます。
さらに、ここには「寝落ち枠」という配信カテゴリや「寝落ちタイマー」という機能があります。夜中に配信を聞いて、眠くなったら寝る、寝られなかったら一緒に起きている。そんな風に、夜中のモヤモヤや寂しさを共有し合うことで癒されているのです。
ほかにも「勉強枠」という勉強をしている姿を配信しているカテゴリもあります。ライブ配信なんてしていたら勉強なんてできないでしょ、と思ってしまいますが、それでも「試験が近いという不安」や「退屈な英単語の勉強」などをシェアすることが楽しいようです。
現役JKライバーに取材
さらに、現役女子高生でありながら、MixchannelやSHOWROOMでライバーとして配信している3人の女の子に、なぜ配信をしているのかを聞くためにインタビューしてみました。
毎日1時間決まった時間に必ず配信をしているという彼女たち。どんなことを普段話しているのかと聞いてみると、やはり、今日あったことを雑談していると言います。カラオケで歌って配信することもあるけれど、ほとんどが「おしゃべり」で、それが自分にとってリラックスできる趣味の時間なのだそうです。
また、「今日も配信待ってるね。」というファンの声を受け取ると、続けるモチベーションになると言っていました。自分を待っている人がいる、というのは、たとえ顔も知らない相手でも頑張ろうと思わせてくれるのでしょう。
リアルの友達には話せないけど、ファンのみんなになら話せることがあると言います。自分を知らない人にだから心を許せる。それもTwitterやInstagramで自分の気持ちを投稿して、そこに時差をおいてリプライやいいね!がやってくるのとは違う、同じ「今」という時間を共有しているからこそ生まれる喜びや親しみがあるのです。
このように見ていくと、ライブ配信アプリがもつ隠れた魅力とは、配信者側にとっても視聴者側にとっても、「現代のサードプレイス」的な癒しの場所であると言えるでしょう。
このライブ配信の世界に存在する「ちょうどいい距離感」は、これまでで言うバーのマスターやスナックのママに近いかもしれません。身近な友だちには近すぎて話せないことも、ぽろっと話せる。別に話さなくても、枠に入室しているだけで同じ時間の中で一緒に過ごせる存在を確かめることで「一人じゃない」と認識できるのです。
この事象から、2つの点が考察できると考えます。