行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #01

炎上が多発している原因は、マジックミラー錯覚と内集団バイアスにある

 

炎上を起こす頻度を劇的に少なくする方法


 消費者を相手にするBtoCビジネスだろうと、法人を相手にするBtoBビジネスだろうと、自社商品・サービスで「炎上」は絶対に起こしたくないものです。ですが、今日のようにSNSが社会の隅々まで浸透していると、避けては通れない道かもしれません。皆さんも1度くらいは勤めている会社や、自分や友人が炎上した経験をお持ちではないでしょうか?

 そもそも炎上は、ある出来事をキッカケに非難・批判が殺到して事態の収集が付かなくなる状況を指すネットスラングです。ただし、インターネットが浸透する以前からも、学校や職場での不用意な発言をキッカケに、大勢から非難・批判される炎上のような状況に陥るケースは幾度となくあったはずです(筆者も何度となく経験しています)。

 ソーシャル上の炎上は、SNSが比較的拡散されやすい手段だからこそ注目を集めるだけで、人間の本質に目を向ければ、炎上そのものが無くなりはしないでしょう。

 言い方を変えれば、炎上を起こしてしまう、あるいは必要以上に非難・批判してしまう人間の心理に注目すれば、炎上を起こしてしまう頻度を劇的に少なくすることは可能だと筆者は思っています。その構造について、今回は一緒に考えてみましょう。

 

他人の視線を意識すらできない「マジックミラー錯覚」


 SNS研修をどれだけ受講しても、バイトテロは無くなりません。例えば最近、Twitterで次のような投稿を見ました。



 夜のコンビニエンスストアの写真。青い看板が光っています。そのお店に入店しようとするのは、別の緑色の制服を着たコンビニエンスストアの定員。写真と一緒に投稿された文章は、「青い看板のお店」を煽(あお)るようなコメントです。
 
 仲間内で盛り上がった瞬間をSNSに投稿したのだろうな、と推察しましました。もし緑色の制服のコンビニエンスストアの広報責任者や採用責任者が、この投稿を見たら「やったらあかんって、常識の範囲内でわからんか?」と頭を抱えているでしょう。私も「より過激な瞬間でなくて良かったですね」と同情します。

 炎上につながる投稿をしている人は、ある種の「心理的錯誤状態」に陥っていると言っていいでしょう。心理的錯誤状態については、岡本真一郎先生が書籍「悪意の心理学」(中公新書)の中で「透明性錯覚」と「マジックミラー錯覚」という言葉を使って説明します。

 透明性錯覚とは、「自分の内心について、他人が実際以上に気付いていると感じてしまう錯覚」を指します。例えば、あなたが大勢の人間を前に緊張しながらプレゼンテーションしている状況を想定してみてください。あなたは「聴衆に緊張が伝わっている」と思うかもしれませんが、それを見ている人の大半は「堂々と話しているな」と思っているものです。

 一方で、マジックミラー錯覚とは「自分の発言について、他人は全く気付かないだろうと感じてしまう錯覚」を指します。例えば、政治家の失言の大半は、周囲を囲む記者やパーティーに参加している聴衆に対して口を滑らしてしまうことで生まれます。目の前に見える記者や聴衆ばかりに意識が向いて、見えないところにいる国民に対する意識が欠けてしまうのです。



 透明性錯覚は「自分が見えているから他人にも見えているだろう」という錯覚に対して、マジックミラー錯覚は「自分に他人が見えていないのだから、他人にも自分が見えていないのだろう」と感じる錯覚です。全く違うように見えて、自分が理解できる範囲だけを見て、他人も同じだと勝手に判断してしまう点において同じです。

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