マーケティングは、どこまで人間を理解できるのか #02

記憶を味方に。ブランド価値を高める秘訣は「脳の仕組み」の理解にある

 

まとめ:とにかく一貫して


 みなさんのブランドの記憶ネットワークの構成要素、ブランド資産は、どのようなものでしょうか。また、これから追加していきたいのはどのような要素でしょうか。
 
 これらがしっかり把握できていないと、コミュニケーションに一貫性がなくなり、行き当たりばったりになりがちです。結局、技術・製品ドリブンのアプローチになってしまって、消費者にとって負荷が高く、効果が期待できません。

 ここで一貫性と言っているのは、時間的に長期にわたって一貫するという意味と、要素間の関係性に一貫性を持たせるということの、二つの意味を持ちます。

 いずれにせよ、一貫性を実現するには、ブランドのエッセンスの部分で、核となる要素を持っていると強いです。
 

 上の図は、その核となりうる要素の例(脚注1・記事末参照)ですが、それぞれ独立しているわけではなく、互いに関連してすべて一貫しています。
 
 商品・サービスが持つ機能が便益をもたらしますが、製品やパッケージの色や形態も、その機能や便益を連想させるものであるべきです。さらに、その体験でもたらされる気持ち・感情も大事ですし、それらを総括して直感的にイメージできるメタファーがあると、処理資源の限られた消費者の脳にはありがたいです。

 そして、なにより根本的には、そのブランドが人間社会や環境にどのような価値をもたらそうとするのか、ブランドの存在価値、パーパスが念頭にあることが望ましいです。すべての要素がそこからトップダウンで決まってくるのが理想でしょう。おのずと一貫性も生まれます。

 これらのエッセンスを軸にして、そこに、様々なブランド資産をネットワーク状に結び付けていく。前章で見た図ですね。そして、その際に、意味記憶だけでなく、エピソード記憶や潜在記憶をしっかりと考慮する。

 ブランド知識や資産をこのように脳の記憶システムから捉えてみることで、エクイティ向上の一助になれば幸いです。次回のコラムでは、それを消費者の意思決定につなげることに焦点を当てて、議論を展開していきたいと思います。
 
マーケティングアジェンダ2020 キーノートに辻本氏 登壇決定!
 「マーケターVS 脳科学者 人の非合理性は、行動経済学と脳科学で解明できるのか」

 Preferred Networksでマーケティング責任者を務める富永朋信氏と対談。


<参考>
1.A・K・プラディープ (著) 仲 達志(訳) (2011) 『マーケターの知らない「95%」 ― 消費者の「買いたい! 」を作り出す実践脳科学』 CCCメディアハウス
他の連載記事:
マーケティングは、どこまで人間を理解できるのか の記事一覧

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録