新・消費者行動研究論 #21

話題のLINEブランドムービー、Tinderマッチング動画にみる、再生数だけではない「動画の価値」

前回の記事:
YouTubeやインスタと共存するTikTok。一瞬の流行と捉えるのは、大きな間違いだ
 

コンテンツの価値をどう算出するのか


 「コンテンツはそれ自体ではなかなか儲からないし、価値を計算するのも難しいからなあ」

 記事や動画をつくるのが好きで、コンテンツにまつわる企画に何度も携わってきた私としては、何度も聞いた言葉だ。

 例えば、Web開発の「TOPページにボタンを置いたら、ちゃんとクリックが増えて、さらにCVRがあがった!」というような直接的なサービスへの寄与を、コンテンツ施策で算出しようとすると、難しいことがしばしば起こる。

 今でこそ、個人がYouTubeでマネタイズしやすくなったと言われるが、マーケティングのツールとして良質なコンテンツをつくり、マネタイズしたり、わかりやすい数値上での直接的な効果を語るのは、まだまだ難しいのが現状だ。

 しかし、この数カ月で、いくつか面白い事例を間近で見ることができた。思わず、ワクワクしてしまったので紹介させてほしい。
 

動画と連携したLINEアカウントで、より深いブランド価値の体験を


 ひとつは、私自身も制作に関わったLINEのブランドムービー「昔、好きだった人からLINEが届いた」だ。
 

 これは、大学生の2人がLINEを通して仲良くなり、両思いになっていく…という恋愛を描いた全5話のストーリーで、最後の2回はYouTubeの急上昇にも入った人気コンテンツだ。

 YouTubeでも展開されたが、LINEのタイムラインや公式アカウントからのメッセージなどでも配信され、公開から2週間程度経った時点で(その時点で4話まで公開されていた)、YouTubeでの再生数が140万回、そしてLINE公式アカウントからの再生数が1200万回にも及んだ。

 参考:LINEドラマ、「昔、好きだった人からLINEが届いた。」最終話を前にYouTube総再生回数が140万回、LINE公式アカウントで1200万回再生を突破!待望の最終話を本日公開

 この動画は回数を重ねるごとにファンが増え、ソーシャルメディア上にも「これやばい、見て」など熱量の高い言及が見られるようになり、大きな反響が得られた。しかし、それだけではない嬉しい驚きが、他にもあったのである。

 それがLINE公式アカウントとの連携だ。今回のドラマに合わせて、主人公とLINEでつながっているような疑似体験ができる公式アカウントをつくっていた。動画内で使われているスタンプもダウンロードできるようになり、まるで自分と同じ世界に登場人物が生きているように感じられる。

 友だち数は2020年9月11日時点で、累計143万人。LINE タイムラインの動画の感想掲示板には数百もの感想が集まり、その中には動画内に出てくるスタンプも散見される。



 動画を通して、ユーザーがスタンプをDLし、タイムラインにコメントし、動画を視聴し、主人公との会話を疑似体験する。動画が提供するブランド体験に長時間接触するだけでなく、動画をサービスと連携することで、いくつものアプリ内の体験をさせることに成功している。

 また、動画の最後には「大切な人に『元気?どうしてる?』とLINEをしてみてください」と語りかけているが、Twitter上に実際に「恋人から『元気?どうしてる?』ってLINEきた」という言及もあり、実際にユーザーのアプリ上での行動を促しているのも見かけることができた。

 アプリ内で動画を流すことで、動画の体験価値を増幅することはもちろん、サービスにとっても様々なコミュニケーション体験を促す結果を導いている施策と言えるのではないだろうか。

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