マーケティングは、どこまで人間を理解できるのか #04
伝統的な消費者行動モデルの呪縛を解くために、マーケターは「注意」の見方を変えよう
2020/10/01
それぞれの注意メカニズムに対するアクション
2つのメカニズムがあるということは、取るべき対策、避けるべき対策も、それぞれ違いがあるはずです。順番に見ていきましょう。
まずは、ボトムアップ型の注意についてです。このタイプの注意は、消費者が意図せずとも注意を引きますし、それにかかる時間も非常に短いです。店頭での非計画購買や移動中に店舗に立ち寄ってもらいたいときなどに、特に効果を発揮しそうです。
先の図のAのように、色や形がまわりの刺激(たとえば、パッケージや看板など)と大きく異なれば、浮かび上がって見えます。それがパッケージで実現できない場合は、POPなどで代用することもできるでしょう。
また、店頭で、動きのあるPOPや音があれば、さらに注意を引きやすく、さらに匂いまで含めて多感覚に働きかければ、ますます効果が高いと考えられます。
メディアを使った広告コミュニケーションでは、あまり知られていないブランドや商品に注意を向けてもらう際に、ボトムアップ型の注意が重要になるでしょう。
予期しない音や視覚でポップアウトさせることに加え、動きのあるものや、さらには感情を喚起するような刺激は、このタイプの注意に効果があるでしょう。
ただし、店頭でもメディアでも特に大事なのは、注意をそれ単体で考えないようにすることです。冒頭の黒板を爪でひっかく例に通じる話ですが、注意が向くと、それと同時に脳内で様々な反応や処理がなされ、後のアクションやブランディングに大きな影響を及ぼします。
くれぐれも悪目立ちになってネガティブな影響をもたらさないように、ボトムアップ型の注意を引く場合には、配慮が必要です。
一方、トップダウン型の注意はどうでしょうか。こちらは、消費者自身の意図で注意を向けてもらわないといけないわけですから、消費者が事前に何らかの経験や知識を持っている必要があります。
ブランド・エクイティが高く、しかもアイコンになるようなアセットがあると強いです。あらかじめ、あの色のあの特徴のパッケージを探すんだ、というアセットがあると、店頭でそれを探そうとして、先の図のBのような探索で有利になります。
また、メディアによる広告コミュニケーションでは、自分に特に関連がある問題の設定や文脈が提示されれば、その後に続く内容を能動的に処理しようという動機になりますから、トップダウンで注意を向けてくれる可能性が高まるでしょう。
そうなると、注意を向けて情報を処理してもらえるだけでなく、自分に関連するストーリーとして記憶に残る確率も高まりますから、広告の効果はより高くなると期待されます。