行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #05

「マスゴミ」という蔑称まで浸透。なぜ人はメディアの報道に偏りを感じるのか

 

私たちマーケターは「マスコミ不信時代」に何ができるか


 メディアの根幹は、「信頼」だと筆者は考えます。新聞にしろ、テレビにしろWeb媒体にしろ、その媒体に対する信頼がなければ、いくら真実に迫る報道であったとしても単なる冗談や与太話で済まされてしまいます。

 ところがマイルドなメディア批判が長らく続いたおかげで、この信頼が少しずつ毀損され始めています。SNSの強い拡散力も相まって、敵対的メディア認知によりメディアに対する不信が強くなってしまいました。

 最近では、特定の新聞社やテレビ局の番組に広告を出稿していると「同じ思想の持ち主だ」とレッテル張りをされて、場合によってはお客さま相談センターに「電凸(電話をかけて抗議・批判すること)」される始末です。この状況は、果たして健全でしょうか。



 メディア論を語れるほど、知識と経験が豊富にあるわけではありませんが、こうした状況をマーケティングに携わる人間として傍観しても良いのか、さすがに疑問に感じ始めています。

 信頼できるメディアに広告を出稿するからこそ「信頼できるサービスだ」と認知されるのであり、信頼が無くなれば、人がどれだけ集まろうと同じように信頼は得られないのではないでしょうか。

 緩やかに蝕まれていくメディアというブランドを、企業として、業界として、どのように信頼回復に努めていくのかは大きな課題であり、その意味において例えば、先日公開された静岡新聞のイノベーションレポートは非常に読み応えがあります(「静岡新聞社イノベーションリポート」リンク先はこちら)。

 「当事者(メディア)がなんとかするべきだ」というのはその通りなのですが、今起きている地殻変動は、当事者だけで何とかなる話でしょうか。

 私がお会いするのは、どちらかと言えば記者の方が多いのですが、「諦め」「放置」「無視」という意見が非常に多い印象です。既にメディア批判は党派性を超えているのに、今までと一緒で良いワケがないと思うのですが…。

 今から4年後、5年後に、この記事を見直して「そんなこともあったね」と笑い話にできるような事態になれば良いのですが、信頼回復の端緒は今のところよく分からない、といったところです。

 <今回の参考文献>
 敵対的メディア認知とメディアシニシズム~韓国社会におけるその実態の把握~(李光鎬)
 MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体(田端信太郎)
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