マーケティングは、どこまで人間を理解できるのか #05

マーケターは、人の根源的欲求を見落としていないか

前回の記事:
伝統的な消費者行動モデルの呪縛を解くために、マーケターは「注意」の見方を変えよう
 

コロナ禍で脳は変わる?


 早いもので、この連載も5回シリーズの最終回となりました。スタートしたのは新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言明けのころ。思えば、その後の半年間に、本当にいろいろなことがありました。

 個人的なところでは、生活の拠点がシンガポールから日本に移り、会社組織からも独立するという変化がありました。コロナ禍での海外引越は苦行の連続でした・・・。

 マーケティングの観点では、いわゆるウィズコロナやアフターコロナ、あるいはニューノーマルといった話題が多くみられました。多かれ少なかれ、読者の皆さんの戦略や施策にも新型コロナに関連した変化があったのではないかと思いますが、どうでしたか?



 私のまわりでは、これに困った人も多かったようで、「コロナ禍で脳はどう変わるのか」「脳の観点からコロナ時代にどうアプローチすべきか」といったご相談も多くいただきました。

 ただ、結局、これらにはすべて少し消極的な回答を返すことになってしまいました。「根本的には、ほぼ何も変わらないのでは・・・」と。

 さて、なぜでしょうか。そして、どうすればいいのでしょうか。
 

「変わるもの」と「変わらないもの」


 一歩引いて俯瞰的に考えると、消費者の行動は表面的には、そのときどきの出来事に応じて絶えず変化し続けています。たとえば、大きいところでは、大地震や台風などの自然災害、バブル崩壊・リーマンショックなどの経済危機、サッカーやラグビーなどのワールドカップやオリンピックなどで、いろいろ変化もあったでしょう。

 マーケターのみなさんは、それに応じてコミュニケーションを最適化したり、新商品やサービスを開発・展開したり、常に対応し続けているのだと思います。その一環として、コロナ禍での戦略・施策を検討するのは、ごく自然な流れですし、とても重要なことだと思います。

 しかし一方で、消費者(人間)の脳は、長大な時間スケールで起こる進化の産物です。究極的に目指すものは大きくは変わらないはずです。私自身は、この普遍的、根源的な部分の理解もマーケティングにとって非常に重要であると考えています。

 この根源的な理解にもとづくことで、場当たり的で表面的な施策だけでなく、消費者・顧客に深く刺さり、長く愛されるブランドにつながる確率が上がると考えるからです。

 上記の「コロナ禍の脳」を知りたい人への回答もこの考えによるものでした。それを具体的に考察するための一つのアイデアとして、進化の観点が大切だと思いますので、今回のコラムでは、その点を掘り下げていきましょう。

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