マーケティングは、どこまで人間を理解できるのか #06

行動が先で、言語化は後。マーケターが見過ごしがちな事実

 

「アクションのあとの理由付け」の繰り返しでロイヤルティを構築


 大事なので、もう一度言います。アクションが先で言語化が後です。言語表現の前に何らかの身体的な状態の変化や行動があるんです。

 だとすると、お客さまの「声」を解釈する際には、どういう身体運動・行動と結びついた言葉なのかをセットで考えるのが効果的でしょう。

 さらには、そもそも理由を言ってもらうためには、何かしらのアクションを起こさせることが有効だと考えられます。

 いつも同じようなことで恐縮ですが、インプットを与えて頭の中で熟慮、比較・検討させて、説得するというのとは全然違います。考えてもらうためには、アウトプット(ACT)してもらうのです。そして、そもそも、そのACTのドライバーは情動的な反応(FEEL)である、というフローです。

 商品やサービスの説明は、説得してアクションを促すためではなくて、お客さまが自分のアクションに対して理由付けしやすいようにサポートするというイメージです。



 よくいただくご意見として、それは「FMCG(特に衝動買い)」の話しであって、耐久財や金融商品などには当てはまらないのでは、というのがあります。私は、そうは思っていなくて、むしろ、そういう商材ほど、このフローが大事とさえ思います。

 ただし、その場合、ACTの部分がいきなり購買やコンバージョンというわけではなく、段階的な小さなアクションの積み重ねが必要だと考えています。

 クリックしてみるとか、お店に足を運ぶとか、試しに使ってみるとか、いろいろなACTがあって、そのたびに理由をつけていく。そうこうしているうちに、徐々にロイヤルティが高まっていくという積み重ねです。

 その意味では、CTRがKPIになっていることが多いのも、それなりに理に適っているように思えますし、テレビCMの最後に出す「検索窓」なども、アクションを促すという意図としては、意味がありそうな気もします。 

 一方で、仮に意図通りに検索してくれたとして、その先にどのサイトに飛んで、そこでどんな次なるアクションを誘導するのか、最終的なコンバージョンまでのフローがきちんと構築できていなければ、せっかくの取り組みも台無しです。単に尺の都合で、詳細はどこかで説明しているという雰囲気をつくりたいだけなら微妙です。

 カテゴリーや商材に関わらず、それぞれの商品の中で全体のフローを把握し、感情をドライバーとして順を追って、アクションと理由付けの連鎖を誘導するのです。個々の取り組みがブツ切れになっているのはダメです。営業や開発など方々の部署に忖度しないといけないような組織だと、なかなか大変でしょうけど。
 

まとめ


 年末が近づくと大掃除が話題になります。考えると億劫ですが、やり始めるとはまって、道具や洗剤を買いに行ったりします。また、ここ最近はまっているカメラとキャンプも、始めてみると、どんどん引き込まれていきました。

 いろいろと複雑な話をしてしまいましたが、案外とそんな単純な事例もあるのかもしれないと思いました。

 要するに言いたかったことは、消費者の脳は言語というより身体ありきで進化してきたという仮説です。そこで、言葉で表現されるとか、意識できるレベルで好きになってもらうためには、検討させるよりも何らかのアクションに導くことが大切なのではないでしょうか、という提案でした。
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