行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #06

「マーケターに必要なスキルは何ですか?」と、質問してしまう人の心理

 

どうすれば相手に理解してもらえるか?


 「知識の呪い」(Curse of knowledge)という認知バイアスの一種があります。自分がよく知っている物事ほど、それについてあまり知らない人の身になって考えられないという傾向を意味しています。ようは一度でも知ってしまうと、「知らなかった」という脳には戻れないのです。

 私にとっては当たり前でも、相手にとっては当たり前では無いかもしれません。「そんなこともわからないの?」と言ったとしても、相手は知らないのだから、仕方がありません。

 網羅された「マーケター必須スキル一覧」を見て、初めて「知らないことを知る」状態に目覚めた人もいるのです。そうした背景を無視して、「スキルなんて!」「こんなこと言う人は不勉強だ!」と言うのは、まさに「知識の呪い」にかかっていると私は考えます。

 「知っている人」ができるのは、知ってもらうことではないでしょうか。決して「あの人は分かっていない」と、批判してはいけません。むしろ批判してしまうと「信念バイアス(自分が確信していることとは違う意見を無視したり、否定したりするバイアス)」や「バックファイア効果(間違いを指摘されると、逆に間違いを信じ込んでしまう効果)」が働いて、余計に不信感を抱いてしまうばかりです。そうした行動は断絶を生みます。



 

業界としてマーケター育成を啓蒙をできないか


 いわゆる「P&Gマフィア」と呼ばれる方々に憧れを抱いて、マーケターになりたいと考える学生・若者は一定層います。これはマーケティング職に限った話ではなく、データサイエンス界隈やプログラミング界隈でも似たような話は起きています。

 データサイエンスやプログラミングの「スクール」は一定の需要があります。入塾して数カ月通えば、仕事がもらえると露骨に打ち出しているスクールもあります。ただし実際は玉石混合で、トラブルを起こしている事例や、スクールに通っても全く”スキル”が向上しなくて、転職もままならないという事例が起きています。

 マーケティングへの関心が広まるにつれて、こうした”ドタバタ劇”が、今度はマーケティング界隈でも起きるかもしれないと思うと、少しばかり憂鬱ではあります。

 一方で、誰がどういう場でどのように”マーケティング”を教えられるのか…という問題があります。これはデータサイエンスやプログラミングも同様です。データサイエンスの場合はデータサイエンス協会が船頭を取ってセミナーをどんどん行っていますが、なかなか難しい現実があるようです。マーケティングにおいては、どのような経緯を辿っていくのでしょうか。本件については、ぜひAgenda Noteを読まれている諸先輩の皆様だけでなく、業界全体で考えていければ良いなぁ、と考えております。

 <今回の参考文献>
 Asch Conformity Experiment
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