行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #09
Clubhouseブームは本物か。その熱狂を心理学から読み解いてみた
大ヒットの解説に見える「後知恵バイアス」
Clubhouseはテレビに取り上げられて一気に広まったこともあり、「有識者」と呼べるような専門家が少なかったせいか、私のような人間にも「Clubhouse現象を読み解いて欲しい」という取材オファーがきます。
ただ、ここまでの一大ブームになると、結局のところ本当のキッカケは何なのか読み解くのは相当難しく、正直に「何が主要因か分かりません」と答えました。
「解説してください」という問いは、マーケターとしての腕が試されているので、分からないことを分からないと言うのは勇気が必要です。しかし、知ったかぶりをするより良いでしょう。20年に鬼滅の刃が大ブームになった時に、多くの専門家が「ヒットの理由はこれだ」と指摘した内容の多くが「なんだか芯食ってないな」と感じました。
もし大ヒットの理由が分かるなら、映画公開前から「これは流行りますよ!」と言って欲しいものです。後出しジャンケンは良くない。物事が起きてから、それらを予測していたかのように解釈したり解説したりすることを「後知恵バイアス」といいます。
後知恵バイアスは「コロンブスの卵」だと言われています。「コロンブスの卵」とは「素晴らしいアイデアや発見も、ひとたび周知された後には非常に単純か簡単に見える」という意味の慣用句です。それと一緒で、内容を知ってしまうと後知恵バイアスが働いて「そうだと思っていた」「そんなの当たり前である」と考えてしまうのです。
私たちマーケターは、Clubhouseのような新しいサービスが出た瞬間から、誰が何に期待して、誰が何で飽きたのかを観察するチャンスを得ます。後知恵バイアスではなく、芯を食った洞察を導くために、熱中しつつも冷めた目で見られているでしょうか。