行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #09

Clubhouseブームは本物か。その熱狂を心理学から読み解いてみた

 

SNSプラットフォームへの期待


 長々と書きましたが、Clubhouseはもちろん、それ以外にもDispoのようなSNSが次から次に登場していて「面白いなぁ」と感じています。時間があえば、著名なマーケターの主宰するClubhouseのルームに参加し、耳を傾けてひとりのユーザーとして楽しんでいます。

 緩やかでもいいので、自分以外との社会的な接点を持ち、誰かと繋がって話をすることは精神衛生上とても良いことです。米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表された「Social relationships and physiological determinants of longevity across the human life span」では、青年期から「社会との強い結びつき」を維持することは、病気のリスクを低下させる可能性が示唆されています。

 また、OECD幸福度白書でも、「他者との接触頻度や人間関係の質は、人々の幸福を左右するきわめて重要な要因」「人は他者とともに時を過ごすことから喜びを得る」と書かれています。

 すなわちSNSは単なるサービスではなく、人との繋がりから心身を充たすサービスだと私は考えています。ClubhouseはTwitterやFacebookとは異なりリアルタイムで音声を聴けるので、より「人肌の温もり」を感じやすいな、という印象を抱いています。特に、私は10代の頃ひきこもりを経験したので「社会とのつながり」がものすごく重要であると肌身で分かります。あの時、孤独だった私を救ってくれたのはBBSとオフ会でした。

 本来なら、Clubhouseにおいても「音声SNSがこれから来る!」といった煽り解説より、会話を通じて心身にどのような変化が起きたのか、そうした「消費者」を起点にした解説を読みたいと考えています。それこそが「消費者のいるプラットフォーム」ではないでしょうか。

 <今回の参考文献>
 シャーロック・ホームズの思考術(マリア・コニコヴァ)
 共感の心理学
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