行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #10

社会人になっても学び続ける「習慣」は、どうすればできる? 行動経済学から解明した2つの方法

 

その2:参照点を変更して習慣化を促す


 2つ目が習慣です。

 歯磨きや洗顔、あるいは肌のケアなど、毎日続ける行為は「さぁ、今日もやるぞ」と気合十分で取り組む必要がなく、「無」というか淡々と行われます。苦痛でも無いでしょう。何も考えていないから、負担に感じることも無く、継続していると思われます。「習慣」は魔法と言っても良いかもしれません。



 継続が「苦痛」に感じなくなった瞬間から習慣になるのだとしたら、苦痛を苦痛と感じないまでに行動を「当たり前」だと捉える必要があります。そのためには自分の中だけの常識のアップデートが必要ですし、欠かせないのは「参照点」の変更です。

 以前に掲載した「人は「得る」より「失わない」ために行動する」でも触れたように、人間は参照点で行動を変えます。人間は主観的に設けられた参照点との「差分」で損得を判断しますし、わざわざ損をするような選択はしない(わざわざ損になる参照点を設けない)生き物なのです。

 コロナ禍となって見る影もありませんが、タピオカ店の大行列で2時間待つのを苦痛に感じないのは、参照点に照らして「並ばない方が損=行列は苦でない」と判断しているからです。「立ちっぱなし=身体的な苦痛」すらタピオカを食べられることで相殺され、かつ価値が上回るのであれば、参照点に照らして「損」で無ければよほどの苦痛も受け入れられると考えています。

 継続して学習し続けたいのであれば、筆者も実践しているのですが、「毎日1時間はイスに座って机と向き合う状態」を参照点にすると良いでしょう。別にマーケティングの勉強をしなくても良いのです。疲れていたら机の上でスマホを触ってボケーとするも良し、漫画を読むも良し。とにかく1時間は座り続けるのが「当たり前」とするのです。

 そのうちに、その1時間で得られる様々な体験を得られない状況が「損」だと感じるようになります。「机に向き合わないともったいない」と感じるようになったら、習慣化が始まっていると言っても良いでしょう。ただし、あくまで「マーケティングの勉強」を主眼とすることです。スマホゲームがメインになると、別にソファで寝転がっても良いじゃん…となってしまいますから。
 

終わりに


 筆者は「座右の銘」として「学び続ける情熱を持て」と掲げています。本来なら「情熱」を持たないといけない時点で習慣化に失敗しているとツッコミを喰らいそうですが、それは年齢を重ねるに連れて「新しい物事へ挑戦する心が失われるから」だと回答しています。

 マーケティングと言っても幅が広いです。アドテクノロジー、データサイエンス、行動経済学、心理学と様々な新しい学びに挑戦しているのも「情熱」が無ければ難しいかもしれません。

 マーケティングは「これを学べば後は完璧」と言えるような、たったひとつだけセンターピンがあるわけでも無いのです。学び続けなければならない難しさと楽しさが両立する世界だから「情熱」は欠かせないと筆者は考えています。

 ようこそ、終わりなき旅の世界へ。これからも読者の皆さんと、学び続けたいと考えています。
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