行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #11

3回目の「緊急事態宣言」の効果が、薄くなってしまった理由

 

「伝える」ことは、難しい


 筆者は、飲食店でお酒を飲むこと自体が「ダメ」だとは思いません。黙ってお酒を飲めば良いのです。ただし、多くの人がお酒を飲むと声量が大きくなり、マスクで口元を覆うことも忘れてしまいます。お酒がダメなんじゃない、人がダメなんです。「黙ってお酒が飲めるなら良いけど、皆さんできないですよね?」というのが専門家会議のホンネではないでしょうか。

 大規模商業施設の休業も、体調の悪いスタッフを無理して働かせない、店舗に入る度にアルコール消毒を要請する、店舗内が密にならない入場規制を敷くなどの規制ができれば、大きな問題はないと筆者は考えます。でも実際は、入店したお店でオペレーションが悪かったらお店に苦情を言う人がいますし、入口の体温計測は誰も監視していなくて有名無実化しているケースも多いです。



 ホンネを包み隠して建前と正論と道徳論で国民を説き伏せようとするから、余計に真意が伝わらないのです。キレイゴトで人は簡単に動きません。「みんな頑張ろう」が許されるのは年に1回、24時間テレビのマラソンだけです。

 一方で、ホンネのまま伝えると怒り出す人もいるでしょう。「伝える」ことは難しいなと思います。どうせ反感をくらうなら、命を守る選択肢を選びたいものです。今からでも遅くないので、政府や自治体は積極的に情報公開して、新型コロナウイルスに感染された重傷者をありのまま報道するよう要請した方が良いです。

 自分は感染しないと考える確率の感覚に不具合を起こさせ、コンマ数%だった印象を、もしかしたら10%、20%かもしれないと錯覚させるのです。これを確実性効果と言います。

 その点、ワクチン接種に関するCM(政府インターネットテレビ「ワクチン接種」編)は「発症を大きく抑える効果があります」とメリットを伝える一方で、「接種後には接種部位の痛み、頭痛が出ることも」「アナフィラキシーが起こって」とデメリットを伝えていて好感が持てます。

 コミュニケーションは1度すれ違うと、なかなか修復には至りません。「相手が勘違いしているからいけない」のではなく「相手が勘違いするようなコミュニケーションをしてしまった自分の責任」なのです。果たして、政府や行政と国民との間に起きているコミュニケーションの失敗は、この先もまだまだ続くのでしょうか。コミュニケーションの専門家を雇うべきかも知れません。
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