行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #12
矛盾だらけの人間。言葉にできない「心」を知る、行動経済学の魅力
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頭で論理的に考えて、心で直感的に考える
行動経済学を学ぶと、今まで当たり前だと思っていた「常識」が壊される経験に何度も遭遇します。その最たる例は、「人間は合理的な意思決定を下す」です。もちろん、合理的な判断をする側面もありますが、大半は「非合理的な意思決定を下す」のです。
記憶違いを起こしていたり、勝手に「こうに違いない」と思い込んだり、状況の把握や認識に捉え違いが起きたり、そうした様々な要因が絡まって、他人からは「非合理的」に見えても、本人からすれば「合理的」な意思決定を下すのです。
ある特定の条件下で、本人から見れば「得をする」、あるいは「損をしない」意思決定を下している、とも言えるでしょう。条件が変われば「得にならない」あるいは「損をしてしまう」のです。その条件を考えるのが、行動経済学という学問の一側面だと考えます。
人間の意思決定は、大半が客観的ではなく主観的です。先日も、いつものようにマクドナルドを食べに行こうとして、ふと視界に入った「うどん」の看板に目を奪われ、急に私の口が「うどん」を求たので、そのお店に入りました。ところが、求めていた「うどん」の味と異なったため、その翌日、わざわざ自転車をこいで丸亀製麺まで行きました。
論理性に欠け、感情の赴くままに行動しているように見えるでしょうが、私は「美味しいものを手軽に食べたい」という一貫性を持って行動しているつもりです。「頭で論理的に考えて、心で直感的に考える」。それが矛盾だらけな人間の姿なのかもしれません。
すなわち、マーケターは消費者の「心」が分からなければならないと思うのです。いろいろな解釈があり、若干の宗教戦争のような議論も起こるでしょうが、「心」の理解は、インサイトを知ることが大事だと私は考えています。