行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #13

ワクチンデマの拡散から、我われが得られる教訓

 

賛成・反対の声を聞く危うさ


 ワクチン接種はしばらく控える、と言っている人と会話をしていると「賛成、反対の声を公平に聞いて、冷静に判断したい」「ワクチンについて賛成派の声が多く、反対派の声が報道されていないのが残念」と決まって口にしていることに気付きました。なるほど、もっともに聞こえますが、これは非常に危険な思考法だと感じます。

 例えば、Αというファクトがあったとします。それに対して99.9999%の人がBという賛成のオピニオンを抱きました。論理的にも、倫理的にも、もはや定説と言っても良いでしょう。一方で、ウケ狙いや逆張りで0.0001%の人がCという反対のオピニオンを発表しました。

 果たして、BとCの両方を聞くことが公平さでしょうか? 筆者は違うと考えます。「聞く」だけでなく、行うべきはBとCの意見を検証し、確からしさを見ることです。

 「賛成の声ばかりだから反対の声も聞いておかないと…」と考える人がいますが、本当に行うべきは「賛成意見の検証」ではないでしょうか。論理的・倫理的に脆弱な意見に耳を傾けたとして、自分にとって聴き心地の良い意見なら心情的に説得されてしまうことは、行動心理学で言う「確証バイアス」や「信念バイアス」が証明しています。
 
Copyright:stunningart

 ちなみに、「聞く」と「検証」は違います。賛成意見と反対意見、どちらが正しいかを決めることが検証ではありません。ファクトに基づき、それが本当かどうかを確認し、正誤を調べるのが検証です。したがって、どちらも間違っている、どちらも正しいという可能性があるのが特徴です。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録