行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #13
ワクチンデマの拡散から、我われが得られる教訓
マーケターこそが反面教師にすべき事例
ワクチンデマが証明しているのは、「情報は歪んで伝わる」という点です。誇張された予想バイアスが妄想をかきたて、ありもしないデマ・陰謀論を生み、誤った公平思考が間違った選択への傾斜を生むのです。
歴史を振り返ると、悲しい事件として「話せばわかる」と諭して撃たれた首相が居ましたが、見方を変えれば「話し合わなければ、わかり合えない」のであり、それほど大衆に対するコミュニケーションは難しいと考えます。
送り手から放たれた情報が受け手に届く際、意図のままに伝わることは稀だと考えても良いのかもしれません。そうでなければ「これは一体、何を言いたいのだ」と頭を抱える広告に出会うはずがないのです。
一方で、だいぶ前から「情報が歪んで伝わる」ことを悪用した広告が出回っています。筆者も、スポーツ分析の有識者としてNHKのある番組に出演する際、少しでも痩せて見えなきゃと焦って「着るだけで痩せるシャツ」を買い、見事パンパンに膨らんだままの腹と顔を視聴者にお届けする事態に遭遇しました。まんまと騙されたのです。
私たちマーケターは、言葉と絵を使い、五感で人間の納得を促す仕事に携わっています。騙そうと思えば、騙せるのです。とはいえ、「情報は歪んで伝わる」という面において、なかなか相手に伝わらなくても、人間に対しては善であるべきギルドでいなければならないと考えます。
ワクチンデマは、騙そうと思えば、簡単に騙せてしまうマーケターこそが、背筋を伸ばし「絶対にこうあってはならない」と、反面教師にする事案ではないかと考えます。
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