行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #14

「東京五輪に反対した奴らは楽しむな!」私たちの身近に潜む“ゼロサム思考”の危険性

   

空気の変化は「選手の頑張り」あってこそ

 
 当社代表の米重がツイートしたように、開会式をキッカケに「雰囲気が変わった」と感じた人は大勢いるのではないでしょうか。
  
https://twitter.com/kyoneshige/status/1419173185572855808
    
 私のSNS上のタイムラインも、オリンピックの話題が多数を占めました。多くの人の心に少なからずポジティブな変化があったのです。それは間違いなく、選手の頑張りを目の当たりにしたからでしょう。

 これは「世論はチョロい(簡単に操作できる)」という話ではありません。オリンピックはオリンピック、コロナはコロナです。実際、8月8日に公開された朝日新聞の世論調査を見ると、五輪開催は「よかった」が56%、「よくなかった」が32%でしたが、内閣支持率は「支持」が28%、「不支持」が53%でした。東京五輪開幕直前の7月に行われた世論調査では「支持」が31%、「不支持」が49%ですから、むしろ悪くなっています。

 すなわち、「東京オリンピックが始まったからには選手を応援する」けど、だからと言って「開催に携わる内閣を支持するわけではない」ということです。多くの人が、大会の開催の是非と、大会で活躍する選手の応援は別だと感じた、と考えれば世論の変化も納得できます。

 一方で、そうした理論に納得できない人もいるようです。例えば、立憲民主党の蓮舫議員が「堀米雄斗選手、素晴らしいです!」とツイートしたところ「あなたは開催に反対していたじゃないか!」と反論する人が大勢いました。

 そのこと自体に、筆者は大変驚きました。ある政治家は東スポの取材に対して「五輪に反対した以上、テレビを見るな!といいたい」と発言したそうです。そんな、極端な…と感じます。

 仮に「東京オリンピックには反対、選手にも出場するなと言いたい」と発言していたなら、選手を応援するのは筋が通らないでしょう。しかし、新型コロナウイルスが終息していないのに、感染防止策が徹底していないから組織を批判し、開催に反対していただけです。「反対したからテレビを見るな」なんて、ちょっと筋違いだと筆者は感じます。

 0か100かで極端に考えるこうした思考を「ゼロサム思考」と言います。物事を白黒のみで判断したり、選択肢を極端に絞り込む思考を指します。「お前は反対したんだから楽しむな」と考えるのは、まさにゼロサム思考です。

 東京オリンピックを通じて、ゼロサム思考は各地で観測できました。例えば、テレビ局がオリンピックの話題の後に新型コロナウイルスの話題を取り上げることも、”手のひら返し”と評されるようです。これもゼロサム思考ではないでしょうか。選手の努力する姿の称賛と、選手の所属する組織への批判が矛盾するわけではありません。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録