行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #15
24時間テレビから考えた、SDGsの「賛同者」を増やす方法
賛同者を増やすためには?
とは言え、「良いこと」をしている以上は賛同を集めたいものです。「別に理解されなくたって良い」という人もいるかもしれませんが、人の数は力です。応援してくれる人は多い方が良い。
例えば、企業のSDGs活動を想像してください。地球と世界に貢献するとして、たった一社が取り組むよりも、商品・サービスを利用している消費者、あるいは取引先と一緒に取り組んだ方が良いに決まっています。ただし、そのためには人が動く「理」が必要で、そのためには今まで述べた通り「善意」「厚意」だけではダメなのです。
では、どうしたら良いのか。その方法は極めてシンプルです。「裏」が無ければ納得しないのですから、「裏」を見せれば良いのです。ほんのちょっと、たった数滴を垂らすだけで、リアルさを見出すでしょう。
ただし、善意の裏側だから悪意とは限りません。キリスト教の「7つの大罪(傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰)」、あるいは仏教の「根本煩悩(貪、瞋、痴、慢、疑、悪見)」など、人のダメな部分を当てはめた方が良いのではないか、と考えます。
「クールビズ」が良い例です。もともとは2005年に「夏場の軽装による冷房節約」をキャッチフレーズにした「ノーネクタイ・ノージャケット」キャンペーンの一環でしたが、好意的に受け止められただけでなく、全世界に波及しました。OECDが行動経済学とナッヂに関する報告書としてまとめた「Behavioural Insights and Public Policy」の中にも、クールビズは日本発の事例として登場します。
「地球環境に良いこと」だけだったら波及しなかったかもしれませんが、「地球環境のために少しルーズな格好をして涼を感じやすくしても良いんだ」と”裏”を垣間見た人が賛同し易くなったのではないかと筆者は考えています。これは、まさに「怠惰」が少し垂らされた良い例です。
その意味において、24時間テレビの賛同者をより集めるなら、筆者はひとつのアイデアとして「強欲」を推します。最初から「今年の寄付金は、これぐらい集めたい」とタレントに言ってもらうのです。行く先々で募金を集め、チャリティマラソンも最初から走る距離も決めるのではなく、走った分だけ募金するとしたら良いのです。「気持ちが大事なのか」という批判も集めるでしょうが、それ自体は決して悪いことではありません。