行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #18

なぜ多くの実績を出してきた人が、老害とも取れる行動をしてしまうのか

前回の記事:
ビジネスパーソンが「有名になる」ことに、どれだけの意味があるの?
 

ある事件をきっかけに考えてみた


 つい先日、とある年長の書評家がTikTok上で書籍を紹介する「Book Toker(インフルエンサー)」のけんごさんを腐(くさ)す、というちょっとした事件がありました。その影響もあって、彼はTikTokの投稿を休むことを発表し、界隈がザワザワしました。一連の流れは飯田一史さんのこちらの記事が参考になるので、ご覧いただければ幸いです。

 今回は事件そのものについては、取り上げません。その代わりに「なぜ年長者は若年者を腐すのか、あるいは活躍を妨げるのか」という、いわゆる「老害問題」について考えてみます。今回のTikTokの件を老害だと断言はできないかもしれませんが、私自身もけんごさんと同じように年長者から腐された経験が何度もあるからです。

 私はアドテクノロジー領域のエンジニアからキャリアを始めましたが、SNSで発信をしていると、「デジタルマーケティングだけでマーケティングを語るな」と嘲笑されました。そうならばと、現代マーケティングの大家であるフィリップ・コトラー氏の書籍を読むと「実務経験も無いくせに」とバカにされました。その後、データサイエンスを学ぶと「それで人の心が分かるのか」、インサイトを学ぶと「マーケティングをわかったつもりになるな」、マーケターの書籍に感銘を受けたと発信すると「この人はマーケティングの本質をわかっていないから」と言われました。本当にSNSは怖いです。



 前回の連載も、特定の誰かを批判したわけでは無いのに「あそこまで書いて、あの人への批判にならない?」と心配して連絡をくれた方がいました。「深読みし過ぎです」と返信しましたし、周囲に忖度しないと文章のひとつも発表できない業界ではないでしょう。

 年長者は、いつだって若年者が心配なのかもしれません。しかし、その老婆心が老害に切り替わることがあるのです。今回は老害問題をテーマに、自分自身が若年者の成長を阻害しないための方法を探ります。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録