行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #19

「和風ツナマヨおにぎり」騒動から学ぶ、炎上が避けられない時代になった背景

 

大切なのは、文脈や状況を正確に伝えること


 私が冒頭で、マーケターが炎上に「巻き込まれる可能性が高い」「避けられない」と言い切ったのは、現在は発言や行動がSNSを通じて一人歩きしやすい時代だからです。単なるインタビュー記事がSNSを通じて炎上するのは日常茶飯事で、火が無くても煙は立つのです。

 加えて、人は確証バイアスやエコーチェンバー現象、総意誤認効果といったバイアスが原因で、全体の評価と特定集団の評価、自分の評価をそれぞれ相対的に判断することが苦手です。「私は嫌いで、みんなも嫌いと言っている、だから間違いない」と思うのです。残念ですが、こうした事態が本当に多く起きています。最近で言えば、映画『大怪獣のあとしまつ』に、そんな傾向が見て取れました。期待していた内容と違うというユーザーの酷評がTwitterで拡散された結果、映画全体の評価を下げたように思うのです。



 根本的な帰属の誤り(対応バイアス)に起因して、歪んだ意思決定がなされた場合、大切なのは正確な文脈や状況を共有することだと考えます。例えば、冒頭の番組制作者は、和風ツナマヨおにぎりに関する該当シーンの一部始終をYouTubeに公開してもよかったと思います。もちろん、再炎上の懸念があるかもしれません。しかし、該当シーンの後半には食べなかった理由をロジックで説明していて、私は「勉強になります」と頭を下げました。

 もちろん世の中には、会話が通じない人もいます。私にすら、定期的に不快な画像を送ってくる人、書籍にひたすら低評価をする人がいます。ただ、そういう人たちが世論になるのを全力で避けるには、無視するだけでなく、一定の限度を越えれば法的対応を取るしかありません。何よりも商品・サービスのファンに、SNSを通じて嫌な思いをさせるのは避けるべきです。

 もし今後、あなたが文脈を無視され、文字だけを切り取られて炎上騒動に巻き込まれたら、根本的な帰属の誤り(対応バイアス)を思い出し、正確な文脈の共有を検討してみてください。それでも誹謗中傷が収まらないのであれば、法的な対応を考えてもいいでしょう。
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