行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #20

ウクライナ侵攻の悲惨な映像で、心を痛めている人へ

前回の記事:
「和風ツナマヨおにぎり」騒動から学ぶ、炎上が避けられない時代になった背景
 

悲惨な映像に、心を痛める人が増えている


 2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻から1カ月が経過します。ロシアに対しては、国際機関や国家レベルでの経済制裁に加えて、民間企業による事業撤退やサービス停止による経済制裁が重なり、歴史の教科書でもあまり見たことがない「戦争」が起きていると実感しています。

 さて、本連載では、ウクライナ侵攻そのものについては触れません。私は何にでも首を突っ込みたがる大阪人ですが、「語りえぬものについては、沈黙しなければならない(ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン)」とあるように、分からないコトは分からないと言えるぐらいの知性は持っています。

 最近知ったのですが、連日の報道でウクライナ侵攻に関する映像を見ることで、精神的なダメージを受けている方が少なからずいらっしゃるようです。確かに、映像が伝えるのはリアルタイムで起きている戦争であり、民間人への虐殺です。そうした映像が急に流れてきて、心の準備をしていなければ、辛いと感じる場合もあるでしょう。

 そこで今回は、まず認知バイアスから抜け出す手法のひとつであるABC理論を用いて、ウクライナ侵攻など悲惨な出来事の影響で、ささくれ立ってしまった心を鎮める方法をお伝えさせてください。



 

「ABC理論」による意識のコントロール


 まず、心を鎮めるために一番良いのはテレビや新聞を見ないことです。あまりにも心を痛めている場合は、自分で意識して報道番組から距離を置くことは、悪くない避け方のひとつです。もっとも、能動的なメディア視聴なら避けようがあるのですが、受動的な姿勢なときについ触れてしまう場合もありそうです。代表的なのはTwitterやTikTokといったSNSでしょう。何気なくタイムラインをスクロールしていたら、刺激の強い映像に出会うことがあります。

 そういう場合は、受け止め方を変える方法を知っておいても良いかもしれません。そのヒントは、認知行動療法のひとつである「ABC理論」です。「Activating event(出来事)」に対して、「Belief(信念、固定概念)」による解釈が生じ、「Consequence(結果)」が生じる、というそれぞれの頭文字をとった言葉で論理療法とも呼ばれます。

 「ABC理論」は、出来事の受け止め方の重要性を説いた理論です。怒ったり悲しんだりするのは「Activating event(出来事)」が原因ではなく、出来事に対する「Belief(信念、固定概念)」が影響しているという考え方です。

  例えば、上司から仕事のミスを指摘されたとしましょう。自分はダメだと思い込んでいる人は「もうダメだ、仕事を続けられない」と捉えるでしょうし、自分は期待されていると思い込んでいる人は「ミスを指摘してくれてありがたい、もっと頑張ろう」と捉えるでしょう。

 「Activating event(出来事)」の多くは、自分ではコントロール不可能です。しかし、ネガティブな「Activating event(出来事)」が起きたとしても、「Belief(信念、固定概念)」次第ではポジティブになりうるのです。 

 ウクライナ侵攻について、自分自身のどのような「Belief(信念、固定概念)」が関係しているか改めて考えてみましょう。辛く困難な状況に追い込まれている人たちに、心を通わせているのかもしれません。

 そこで例えば、ひとつの提案として、辛く悲しむだけではなく、そこから「ウクライナ頑張れ!」と寄付するキッカケになったと考えてみるのはどうでしょうか。受け止め方を変えることで、「Activating event(出来事)」が変わるわけではありませんが、自分自身のメンタルの落ち込みは多少なりとも防げます。物は考えよう、気は持ちようと言います。自らメンタルが辛くなるように追い込まないよう、自分の心とうまく折り合える人が少しでも増えれば良いなと考える次第です。

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