行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #20

ウクライナ侵攻の悲惨な映像で、心を痛めている人へ

 

「ABC理論」の応用(パーセプションについて)


 さて、ここからは、マーケティングの話になりますが、「Belief(信念、固定概念)」を変えれば「Consequence(結果)」が変わる点において、消費者のパーセプション(認知)を変えているとも言えます。ABC理論を学ぶことは、マーケティングにおいても少なからず有効であると考えています。

 消費者が物を買う時、どういった「Activating event(出来事)」があって、どのような「Belief(信念、固定概念)」があると、自社の商品・サービスが選ばれるかは、リサーチを通じて知っておくべきでしょう。

 例えば、昔から馴染みのあるお菓子がコンビニに陳列されているのを見て、私の妻は「こんな子供っぽいもの!」と反応して購入しませんでしたが、私は「懐かしい!」と反応して購入しました。

 私の中の「Belief(信念、固定概念)」として「昔の出来事はなんだかんだで良かった」と美化されているし、私の妻の中の「Belief(信念、固定概念)」として「いい年齢なんだから大人として振る舞わなければならない」と仮面を被っているのでしょう。

 ちなみに、「Belief(信念、固定概念)」は認知バイアスの温床になりやすく、注意が必要です。私の場合は「薔薇色の回顧」と呼ばれる、過去を美化して思い出すバイアスにかかっています。



 購買行動は、因果関係で言えば「結果」です。購買しようとする「原因」があるはずです。人間の行動を「Activating event(出来事)」と「Belief(信念、固定概念)」に分けられるとしたら、私たちマーケターは「原因」は「Activating event(出来事)」だと思いがちですが、実際には「Belief(信念、固定概念)」ではないでしょうか。

 もっとも、「Belief(信念、固定概念)」を変化させるとは、洗脳やマインドコントロールといった類ではなく、消費者自ら率先して違う「Belief(信念、固定概念)」をつくるということです。人は「そう行動したほうが自分によりメリットがある」と感じたら、考えを変えるからです。

 私たちマーケターは、強制力ではなくこうした対話でメリットを提示して、「Belief(信念、固定概念)」を変えるように働きかけなければいけないと強く思っています。
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