行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #22
知らぬ間に嫌われる前に。何度も接触すると関心度が高まる「ザイオンス効果」を味方にしよう
ザイオンス効果の影響と誤解
とは言え、「嫌われない」ことはとても難しいです。普段からTwitterには犬写真のみアップするようにしていますが、ときどき「松本さん荒れていますね~」と声を掛けられます。「やばい嫌われてしまう」と焦ってしまいますが、抑えきれない人間のヘドロは隠そうとしても外に現れるので仕方ないかもしれません。
そこで、私が数年前からザイオンス効果で意識しているのは「知識で詰める」ことです。具体的には「メンタルアベイラビリティを高めること」と「カテゴリーエントリーポイントを増やすこと」を目的に、知識を詰め込んだnoteを公開し続け、好きにはなれなくても嫌われないことを目標としました(詳細な解説は「ブランディングの科学」に譲ります)。
私はマーケターとしてもデータサイエンティストとしてもリサーチャーとしても中途半端で、強いポジションを構築できているわけではありません。しかし、強いポジショニングが強いキャリアを生むわけでもないと考えています。ポジショニングが強すぎると「松本さんと言えば、○○ですよね」といった限定された人間になってしまうからです。
ポジショニングが狭くなればなるほどライバルは減りますが、市場も減ります。直ぐに出会える特定領域のNo.1では、私は人生が面白く無いと感じます。
筆者はこれまで16冊の書籍を刊行する機会に恵まれましたが、内訳はマーケティング3冊、データ分析/サイエンス5冊、人工知能3冊、ドラッカー2冊、自己啓発3冊に分かれます。10冊目ぐらいから意識してキャリアの分散を狙っていました。投手で例えると、球種を増やすことで、打ち取れる確率(消費者から知られる機会)を増やしていました。
マーケターとしてのザイオンス効果を狙って接触頻度を高めるよりも、加えてデータサイエンティストやリサーチャーも含めてザイオンス効果を狙う方が、接触するコンテンツの内容も変わり、頻度も高まり、より有効だと考えています(その効果として直近、刊行した「人は悪魔に熱狂する」は4刷、「データ分析力を育てる教室」は2刷になったと思っています)。
ブランドのペルソナが人で語られることもあるでしょう。私のように知識の軸足を増やすことは、飲食ブランドで例えれば違うフレーバーを出すことかもしれませんし、日用品ブランドで例えれば違う容器、違う用途で出すことかもしれません。会社も商品も人も、同じブランドです。
ブランドと同様、自分のキャリア(人生)を70歳までは生き抜くことを考えたら、こうしてサバイブする能力を高める重要性を感じる日々です。
- 他の連載記事:
- 行動経済学で理解するマーケティング最新事情 の記事一覧
- 1
- 2