SNS・消費行動から見えてくるアラサー女子のココロ #36

2023年はZ世代論、やめませんか? 感度の高いマーケターは気づいている「世代論の終焉」

 

感度の高いマーケターは気づいている “世代論の終焉”


 若者のことを語っている人たちは、すでにこの流れを察知している。

 Z世代の企画屋さんと呼ばれている今瀧さんは「Z世代マーケの本質は『金魚すくい』」と語った。大きな網(世代)ではなく、小さなポイ(さらに小さな集団)ですくうのがミソという話をしている。

 SHIBUYA109lab.の長田さんは、「界隈」というキーワードを抑えることが重要、という話をしばしばしている。「界隈」とは、特定の興味領域を共通して持つコミュニティのことだ。

 さらに、自身もZ世代であり、Z世代について著書『世界と私のAtoZ』を出版された竹田ダニエルさんも、書籍の中で以下のように語っている。

「私はそもそも『Z世代』というのは生まれた年月で区切られるものではなく、『社会に対して目を向け、常に自分と向き合い、誰もがよりよい社会を目指すべきだという “価値観” で』形成される『選択可能』なものではないかと考えている」

 いずれも、「世代論で語るのはもう無理」という主張であり、さらに深ぼると「特定の興味領域や思想を持つクラスタ」単位で、若者を観察すべきという話ではないだろうか。

 ここで私は、最もプレーンな言葉として、この消費者を観察するための、特定の趣味や思想を持つ集団を「クラスタ」という名前で呼んでみたい。クラスタは次のように考える。
 
  • 共通の趣味・思想を持つ集団。共通項はジャンルを問わず、ファッションでも思想でも趣味でも構わない。
  • 1人の人間は、複数のクラスタに所属する。それ故に、共通事項以外では異なる点も多く、クラスタが同じでもライフスタイルは異なる。
  • 同じクラスタの中で、年代や性別は関係ない。

 個人的には、ひとりの人間の中に複数の「クラスタ」が存在するのが面白いと思っている。その人に付随するハッシュタグのように考えるのがいいかもしれない。マルチメディアを使いこなす今、「分人主義」が当たり前だからこそ、アイデンティティも個人の中に複数ある。

 実際にこちらの記事では、「クラスタ」を前提としたトレンドの誕生が紹介されている。

「例えば、最近人気の『Y2Kスタイル』(編集部注:2000年ごろに流行したファッションのこと)に欠かせないアイテムでもある『アームカバー』。ファッション部門でトップになりましたが、もともと22年の初頭にストリート界隈で流行していたトレンドでした」

「しかし、夏ごろからレース素材やメッシュ素材のアイテムが登場。ガーリーテイストな洋服にも取り入れやすくなったことから、“量産型女子”(編集部注:髪形やメーク、服装などをそのときの流行に合わせるスタイルの女性)たちもファッションにアームカバーを取り入れるようになりました。そして今や、より幅広い“界隈”に受け入れられ、22年を代表するトレンドアイテムになっています」

 今年流行した「ギャルピース」も、同じくY2Kスタイルに含まれるカルチャーだが、元々はK-POPアイドルが流行させたポーズで、SNSで拡散されている間に、広くトレンドとして知られるようになっていったと個人的には感じている。

 だからこそ、今は世代論よりもクラスタを意識することが大切なのだ。同じ記事でもこのように伝えている。

「だから、今こそ意識したいのが、まず特定の“界隈”にしっかり受け入れられること。Z世代と大きくくくって全体にアプローチしようとするのではなく、むしろ特定の“界隈”に参加し、完全に攻略して流行を生み出せれば、アームカバーのように『あの界隈ではやっているものをうちの界隈でも取り入れよう』と伝播していく流れをつくることができるのです」

「若者」も「Z世代」も「F1層」も解像度が低すぎる。というよりもはや、その区切り方が的外れになってきているのである。私たちは世代ではなく、興味や思想で人とつながっている。

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