トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #01

ファミマ CMO 足立氏が語る、価値共創というレンズでみるマーケティング【Facebook Japan中村淳一氏 新連載】

 

ただ「話題化」すればよいわけではない


中村 足立さんは「マーケティングは商売である」とよくおっしゃいます。商売ではよく“三方よし”が大事だと言われますが、足立さんが考える“三方よし”について教えてください。

足立 三方よしは、一般的に「お客さま」「自社」「社会」の3つで構成されると言われています。最近では、特に社会という視点では、SDGsやサステナブルなどが注目されていますが、私は世の中で「話題になる」ということも社会にとって意味のあることだと思っています。なぜなら、そもそも社会にとって何らかの価値のあることしか、話題にならないからです。逆に、何の話題にもならない商品・サービス、またはそれを取り巻くプロモーションや施策は、社会的な価値が少ないと思います。つまり、話題化も私の中では「社会よし」なんです。

企業が価値を提供しようとがんばる。すると、お客さまがその価値を感じて、商品やサービスを購入してくれて話題になっていきます。そのため、私は“三方よし”であることをあまり特別なことだとは思っていないというのが、正しい表現ですね。

中村 「話題になる」と一口に言っても、人によって定義が少し異なるのではないかと思ったのですが、いわゆる「バズる」や「バズらせる」という話題化とは、少し違うのでしょうか。

足立 「バズらせる」ということも、話題化のひとつです。私が強く思っているのは、どんなに良い商品やサービスでも、お客さまに知ってもらわなければ、売れないということです。この情報過多の時代、話題にならなければ、そもそも多くの人に知ってもらうことすらできませんから。

一方で、話題になっても、売れない商品やサービスもたくさんあります。それは、話題の中身が、提供している商品やサービスとつながりが弱いからです。最近もそういった事例を多く見かけます。たとえば、テレビCMは面白いので覚えているけれど、何の商品のCMだったかは全く覚えていないというケースです。それでは、お客さまの行動に結びつかないので、話題化してもほとんど意味がないと思います。
  
「話題化」について語る足立氏

中村 最近では、「話題化」の後に、お客さまの良い声が広がる「評判化」もさせなければならないという話も耳にしますが、それは今の話に近いのでしょうか。

足立 その答えは、「イエス」と「ノー」の両方だと思います。我々コンビニのように、2~3週間の周期で新しい商材を扱うビジネスでは、店頭での商品の切り替えが早いため、評判化までのプロセスが非常に短いんです。逆に言うと、1週間で認知から評判形成、購買までを一気に動かすビジネスなんです。そのため、新商品やサービスに関して言えば、評判化というプロセスは、重要でありますが、長期間をかけてやることではありません。

一方で、宝飾やレストラン、美容、医療など、同じブランドで長くビジネスを継続させていく商品やサービスは、良い評判をストックさせていくことが大事なので、評判が溜まれば溜まるほど効果を発揮します。つまり、どんなビジネスでも「評判化」というプロセスはありますが、その時間軸によって重要度が異なるのだと思います。

中村 時間軸や重要度は異なるけれど、足立さんのおっしゃる話題化は、同時に評判化も必要ということですね。結局は、顧客が「価値」を感じ、それによって「評判化」した商品やサービスを別の顧客が見たときに、自分にとって価値があると感じる設計にしないといけないということでしょうか。

足立 そうですね。面白いと思ってもらうだけではなく、私もトライしてみよう、購入してみようと思ってもらうことが重要です。それが商品やサービスに紐づいた話題化だと思います。

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