トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #01

ファミマ CMO 足立氏が語る、価値共創というレンズでみるマーケティング【Facebook Japan中村淳一氏 新連載】

 

「話題」に「信頼」が乗ることが共創のポイント


中村 今回の連載は、「価値共創」がテーマです。ここまでの話の中でも、さまざまなヒントがあったと思いますが、お客さまとの共創について足立さんの考えを教えてください。
  
企業との共創について質問する中村氏

足立 お客さまとの共創の前提として、古くはアリストテレスの時代から、何かを伝えるということは、「何を言うか」「どう言うか」「誰が言うか」の3要素から成るとされてきました。この中で、ソーシャルメディアの台頭によって大きな影響力をもったのが「誰が言うか」です。

ただ、私は未だに世の中に出回る情報の大半は、企業側からの発信によるものだと思っています。最近では、情報発信の主体が「企業から個人に変わった」と言う人を見かけますが、私はまったく違うと思っています。もちろん個人が発信源になっている場合もありますが、よくよく見れば、企業が発信した情報に個人が反応していることがほとんどです。

ただ、お客さまが発信した情報が重要ではないという話ではありません。企業が自社製品の水について「この水はおいしいですよ」と言うのと、お客さまが「このお水はおいしいよ」と言うのでは、同じ内容でも信頼度が違います。お客さまから発信していただくことで、信頼度が圧倒的に高まるので、企業側はお客さまにソーシャルで「これがいいよ」と言ってほしいわけです。そのため、我々は企業から一方的に発信するだけでなく、いかにお客さまに話してもらえるか、発信してもらえるかに一生懸命に取り組んでいます。これもお客さまとの共創です。
  
対談中の足立氏(左)と中村氏(右)

中村 話題化によって商品やサービスの信頼性を高めるというのが、お客さまとの共創のポイントということですね。

足立 はい、今の時代はソーシャルメディアがあるため、10年前には不可能だったことが、可能になりました。個人の発信力が強まったというよりも、全体の情報量の中に占める個人の発信する情報の割合が非常に大きくなったので、社会的な影響力を持つようになったのだと思います。

中村 早稲田大学 商学学術院長の恩藏直人先生によると、今までは、商品がその顧客の抱えている課題を解決するかがコミュニケーションの主体でしたが、消費者の中から声を上げるサポーターやファンの存在が出てきたことで、レビューやUGC(ユーザー生成コンテンツ)から信頼性につなげることも大事になっているといいます。その辺り、足立さんはどう思われますか。



足立 確かに、それは進んでいると思います。ただ、業界や商品・サービスによっても随分違って、あくまでも割合の話だと思います。先ほどの「個人の発信する情報の割合が大きくなった」ということです。

情報の割合という意味では、私は今でもマス広告は有効だと思っています。インターネット上であれほど大きな存在感を示しているAmazonやGoogleがテレビCMを打っていること自体が、マス広告の有効性を証明しています。やはり広く知ってもらう、認知を獲得していくという側面では、まだまだマス広告は圧倒的に有効です。ただ、割合という意味では、どんどんとソーシャルの方に、要は個人が発信する情報が増えてくるかもしれません。これは間違いないですね。

業界によってマス広告ができる、または効果の高い業界や業種もあれば、そうではない業界もあると思います。個人での発信が増えたことは明確に大きな流れですが、今でもマスが大きな比重を占めている商品やサービスはあります。

中村 そうですね。オウンドなどの発信に加えて、マス広告を行なっている感じですよね。

足立 はい。認知を獲得するという意味では、圧倒的にまだマス広告は有効です。そのため、広いお客さまをターゲットとして、かつそれだけの収益性が見込める業界は、今後も継続してマス広告を利用すると思います。

中村 もしかしたら、マス広告の定義が人によって異なるのかなと思いましたが、たとえば、もしコンテンツがユーザーとの共創で作られ、それを広く告げる場合はマス広告になってくるのでしょうか。

足立 そもそもメディアには、オウンドメディア、アーンドメディア、ペイドメディアが存在します。オウンドでは、我々であると店舗やアプリになりますが、アーンドではソーシャルとPRがあります。そして、マス広告と言っているのは、ペイドの中のマスメディアである、要はテレビと新聞です。この辺りを活用する、しないの話になります。

中村 では、コンテンツとは別の話になりますね。

足立 はい、別の話です。

中村 お客さまを巻き込むコンテンツも、それを広く告げるのであればそれはマスになってくると思います。

足立 それはマスにあたりますね。ただ、ソーシャルやPRはリーチが限られていることが多いので、それらの媒体だけでマスのお客さまに対して、再現性のあるかたちで、巻き込んでいけるかどうかは疑問です。短期間で広い方々に対して、認知・認識を獲得していくのは、ビジネスという面ではとても重要です。

中村 なるほど。足立さんは、よく定番が重要ということも話されると思うのですが、定番の商品こそ、信頼や中長期的にストックすることができるソーシャルを活用することが有効的だと思いました。いわゆる「話題化」だけではなく、話題のあとにきちんと「信頼」を形成し、さらにそこで評判形成していくことが重要だと思うのですが、いかがでしょうか。

足立 そうですね。定番に関しては、ストックも評判も非常に重要ですね。そのため、我々は常にある定番の商品と期間限定の商品を、両軸で行なうようにしています。ただ正直、定番に関しては常に「引き」の強いニュースを作れるわけはないので、期間限定の商品を通してさまざまなお客さまがファミマに行ってみようと思って頂き、実際に御来店いただいた時に、期間限定の商品と併せて定番の商品も購入してもらう、というようなことを促進したいと考えています。

中村 そうですね。定番であるストックと、期間限定のフローの両軸で取り組み、結果的にフローがストックされていくみたいな流れをつくることができるのではないかと思いました。

足立 はい。そこは最終的にはストックとして、「ファミマの商品は美味しい」などのイメージになると思います。

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