トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #03
顧客による「誤読」の自由が、価値共創の可能性を広げる【Preferred Networks 最高マーケティング責任者 富永朋信氏】
2023/04/04
ソーシャルメディアの普及により共創の可能性がより拡大
中村 これまで価値共創の「価値」について伺ってきましたが、「共創」については、マーケティングの視点からどのように捉えていますか。
富永 誤読は、共創そのものだと思うんですよ。共創とは、それを現在のようにトラッキングできたかどうかは別として、昔からあった考え方です。今の時代はお客さんとつながりやすく、かつ多くのお客さんとネットワークがつくりやすいので、誰がどのような誤読をしているかを捉えやすくなっています。
そして、コミュニケーションも容易になっているので、たとえば商品やサービスが完成する前の、プロトタイプの段階からお客さんを巻き込んで、その意見をもとに商品の仕様を変えたり、機能を開発したりできますよね。
つまり、従来の共創はマーケターが世に放ったものをお客さんがただ誤読するだけでしたが、現在の共創はよりインタラクティブであり、より複層的であり、より可能性が大きいように考えます。
中村 「価値共創」という観点で、富永さんがこれまでに取り組まれた事例はありますか。
富永 私が現在、Preferred Networksで取り組んでいることです。2023年2月に、消費者向けの家庭用自律移動ロボット「カチャカ(Kachaka)」を発売(先行予約開始)しました。開発途中で何度もユーザーテストを繰り返し、より良い挙動やより直感的なインターフェースを探ったのです。
中村 ここまでのお話を伺いながら、「誤読の自由」という言葉をとても気に入りました。実は、Facebook Japanでも誤読の自由によってサービスが改善されたという事例があるのです。
たとえば、Instagramのハッシュタグでの検索は、こちらが意図せずに誕生したものです。日本はグローバル平均の約5倍ハッシュタグ検索を活用していたため、その背景を知るために利用者のリサーチを行いました。すると、こちらが想定していた以上に、ハッシュタグ検索で画像を見て、直観的に情報を仕入れていることが分かりました。
そこから、ハッシュタグ検索に地図機能を付けて、地名などの検索結果にレストランやカフェなどの店舗が地図上に表示できるようにしました。さらに、その中からレストランをひとつ選ぶと、その店舗のハッシュタグが付いた画像を一覧表示するように進化させています。このような事例は、まさしく利用者のインサイトやユースケースから生まれたものです。