トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #04

行動経済学の観点からみる「価値共創」とは? Preferred Networks富永朋信氏が語るオートノミーの重要性

 

ロイヤリティを上げるには、心理的リアクタンスを無くす


中村 オートノミーの状態で集める情報と、本人の意志に関わらず与えられる情報では、その情報に対する理解や納得度は変わるものでしょうか。

富永 変わると思いますね。人間は上から目線、あるいは高圧的に言われたことには、反発する気持ちが芽生えます。これを「心理的リアクタンス」といいます。他者の理屈によって何かを購入することは、大なり小なり心理的リアクタンスが付きまといますが、自ら能動的にリサーチして購入すれば、それがまったく発生しません。それだけでも、全然違うと思いますね。

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価値共創について語る富永氏(左)と中村氏(右)

中村 「誤読の自由」から生まれたいろいろなお客さまの視点を知ることは、その過程から心理的リアクタンスがあまりないので、さまざまな情報を吸収しやすく、結果として商品・サービスに対する理解が深まっていくことになりますね。また、その価値共創のプロセスに巻き込まれることで、オートノミーに近づいてロイヤリティが上がっていく。

富永 はい、それが十分に起きうると思っています。一方で、マーケターとして気をつけなければならないのは、ソーシャルメディアによる幸せバイアスです。SNSは、基本的に自分が幸せと感じることを投稿する傾向にあるため、人はリアルよりもSNSの世界のほうが幸せに見えるという話があります。そのため、少しシニカル(皮肉な態度)やブラックではあるものの、おもしろい考え方やユースケースは見つけにくいと思うので、それをどのように拾うかが課題かもしれないですね。

中村 最後に、これから「価値共創」の観点を取り入れたいと考えているマーケターに、アドバイスをいただけますか。

富永 「価値共創」は、価値のコントロールやアイデア出しをお客さんに丸投げすることでは断じてありません。価値共創や顧客第一主義というと、とにかくお客さんの声を聞くということが先立ってしまい「なぜ聞くのか」、「何に関して聞くのか」という本質的な部分が疎かになってしまうケースもあると思います。

そうすると自社のユニークネスがなくなってしまうので、そうならないために、まずは自分の考えをしっかりと持った上で「価値共創」に取り組んでいくことが、昔も今も変わらず重要だと思います。

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対談後の富永氏(左)と中村氏(右)
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