マーケティングは、どこまで人間を理解できるのか #18

バイロン・シャープの「ブランド論」を最新脳科学の仮説から検証してみる

 

まとめと次回の展望


 今回は、知覚とアクション・行動を予測誤差の最小化という一つの枠組みでとらえようとする仮説を紹介し、それとブランディングとの関わりについて考察しました。

 ニューロサイエンスの前提が仮説的な理論であるため、それをブランディングにまで適用することは行き過ぎかもしれません。しかし、感覚入力から順番にボトムアップで情報を処理していく過程に依拠した従来の「感覚マーケティング」では、何かが大きく不足しているというのも事実だと思います。それを補完するものとして、今回の仮説が有用である可能性があります。今後も日々更新される新しい情報に注意を払いつつ、柔軟に対応していきたいと思います。

 次回は、さらにもう一ステップ進めて、消費者の感情に関する話題に展開していこうと計画しています。これまでの「感覚マーケティング」ではいわゆる「五感」に焦点が当てられていましたが、その枠を超えて「内受容感覚」と呼ばれる感覚に注目し、その情報の予測符号化という視点から、消費者の感情を考察していきます。

<脚注>
 
  1. Yon D. et al. (2020) などをもとに筆者が作成
  2. ベイズ推定 日本心理学会Webサイト
  3. ただし、大半の階層では、「予測」といっても、それはその階層レベルの神経ネットワークの活動パターンにすぎず、字面からイメージされるような(あるいは辞書的な意味での)予測とは違いますので、その点には少し注意しておいたほうがよいでしょう。
  4. バイロン・シャープ(著)、前平謙二(訳)、加藤巧(訳) 『ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11』 朝日新聞出版 P.256
  5. 同書のP.262
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