トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #06

現代のマーケターが知るべき若者の消費傾向、キーワードは「共創」「参加」「体験」「界隈」【SHIBUYA109 lab.所長 長田麻衣氏】

 

若者の生の声を聞く


中村 長田さんは、価値共創には何が必要だと考えていますか。

長田 必要だと思うことは3つです。ひとつ目は、企業も若者と同じ目線になって盛り上がることです。「この界隈は楽しい!」と若者に思ってもらえることが、本当の界隈の理解だと思いますね。

中村 若者も、参加して盛り上げたいという感覚ですもんね。

長田 2つ目は、マーケターとしてのバランス感覚ですね。若者が企業に対してそうであるように、企業も若者から聞いたことをすべて鵜呑みにすると失敗してしまいます。そうではなくひとつの参考情報として捉えるなど、バランスが重要です。

3つ目は、お互いにオープンマインドであることです。「お客さま」と「企業」という線引きをするのではなく、企業の課題もオープンに話して、本当に仲間としてその解を一緒に考えていきたいと伝えるマインドセットが大切だと思います。

中村 企業の課題や問題点を話して、若者の意見を引っ張ってうまくブリッジしてあげて、一緒に共創していくということですよね。同じ目線に立つというのも、人の会話にエンゲージするときのコミュニケーションスキルに似ていますね。

長田 たしかに、それをけっこう意識しているかもしれないですね。

中村 最後に、共創を実現したいマーケターにメッセージをいただけませんか。

長田 本当に共創したいのであれば、まずは直接若者に会って、生の声に耳を傾けてみるということが、今後はすごく大事になると思います。今はデジタルでいくらでも行動や評価が見られますが、その裏にある本当の気持ちはすごく揺らぐし、絶妙なんです。

その微妙なニュアンスや感覚をわかっているかどうかで、広告や告知、イベントの構成なども変わると思うので、その理解が共創への第一歩だと思います。ぜひ、若者に聞きに行ってみてください。

  
 
中村氏の対談後記
 今回はSHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏に特にZ世代若者の求めるコミュニケーションという観点でお話を聞かせていただきました。印象的だったのは、「体験からの逆算による消費」「参加型のコミュニケーション」「界隈消費」といったキーワードでした。その中で、Z世代においては、企業は個人と同等の存在であり、対話を通してブランド体験を一緒に作るためのマーケティングの場では重要なのではないかという印象を持ちました。そうした体験は文字ではなく、画像・動画といったビジュアルコミュニケーションで周りに伝わっていき、更なる共感を生むといった連鎖が見えた気がします。長田氏がおっしゃるように、企業目線のコミュニケーションを伝えるだけではなく、顧客を対等の仲間として認識し、必要に応じてクリエイターにも通訳として入ってもらい、対話する場を作っていくことがその第一歩なのだと感じました。これは第一回目にお話を聞かせていただいた足立光氏の、どういう話題をお客様に話して欲しいかを先に設計しておくというお話ともつながるのではないかと思います。貴重なお話をありがとうございました。
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