トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #08

現代に葛飾北斎が降り立ったら通用する? マーケターが長く活躍するための唯一の道【クー・マーケティング・カンパニー 代表 音部大輔氏】

 

世代は年齢で分けるのではなく、共通歴史体験で分ける


中村 最後にひとつ、Z世代には「今までのマーケティングが通用しない」と言われていることについて、どう思われますか。
  

音部 たしかによく聞く話ですが、私はあまり世代論者ではないと思います。大事なのは年齢ではなく、何を共通の経験としてきているか、ではなかろうかと思います。

経済の爆発的な成長による熱狂を経験しているか否か、一方では自然災害の経験、身近な人のリストラを目にする経験など、それぞれの時代の共体験をもって世代と呼ぶならば、間違いなく違いはあるだろうと思います。

中村 それはあるでしょうね。

音部 戦争を経験した世代とそうでない世代が違うように、コロナ禍で学生時代を過ごした人とそうでない人では違います。なので、世代論よりも、どのような歴史や体験が影響を与えるのかという切り口のほうが意義深いのではないかと思います。歴史や体験が違えば、同じ情報を見ても処理の方法が違うので、働きかけ方、すなわちコミュニケーションも異なりますからね。

中村 同じ情報でも、見方が変わるわけですね。

音部 そうです。だから、 Z世代へのマーケティングが難しいと言われるのは、何をもってこの人たちの共通の歴史や体験とするのかがまだ明示できていないからではないでしょうか。

中村 音部さん、貴重なお話をたくさんいただきました。本日は、ありがとうございました。
  
 
中村氏の対談後記
皆様、いつもお読みいただき誠にありがとうございます。

今回の記事では、私たちが尊敬し、多くのマーケティング愛好者にとっても「師匠」とも称される、音部大輔さんにお話を伺いました。特に印象的だったのは、お客様に愛着を持ってもらうブランドになるために、お客様のパーセプションをコントロールするのではなく、「発話したくなることを言う」、「真似したくなることを提示する」、「少し加工できる余地を残す」ことで、参加する余地を残すことをブランドとして意図すること。この考え方を『機動戦士ガンダム』を通じて解説してくれたことは、非常に興味深く、また鮮やかな例えとして心に残っています。さらに、顧客から想定外のユースケースを学ぶための具体的な手法としてロイヤルユーザーへのインタビューを行うことの重要性など実践的なアドバイスもいただけました。

また音部大輔さんならではの深い洞察として、様々なマーケティング手法のトレンドの流行り廃りがある中で、マーケティングにおける「サイエンス」と「アート」の違いについてでした。この示唆は、皆様にとって非常に価値があり、皆様の参考になったのではないかと思います。

音部大輔さん貴重なお話をありがとうございました。
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