トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #10

価値共創とは顧客との握手である。マーケターがサービス・ドミナントロジックを活かして価値共創を取り入れるには?【スケダチ 代表 高広伯彦氏】(後編)

 

マーケターが価値共創の観点を取り入れるためには


中村 最後に、価値共創の観点を取り入れたいと考えているマーケターが最初にできることについて、何かアドバイスをいただけませんか。
  

高広 米国で影響力のある戦略論の思想家C.K.プラハラードやサービス・ドミナントロジックのさまざまな書籍を読んで、世の中で言われている「価値共創」という言葉の概念と、それらの書籍の中に書かれている「価値共創」の概念の相違について考えるところからスタートしてみたらいいと思います。

中村 そうですね。もしくは、いま学んでいるマーケティングは、何かを前提にしてつくられているのかをまず疑ってみるとかでもよさそうですね。

高広 ある意味、「クリティカル・リーディング」なんです。「クリティカル・シンキング」と混同されがちですが、「クリティカル・リーディング」というのは、文章・書籍を読むときに、そのポイントを的確に把握し、文章上のレトリックや論理の飛躍に騙されないようにすること。書かれた内容や立場の合理性、論理性を検討しながら読むこと、といった「読み・理解するためのスキル」です。このスキルを持って、マーケティング関連の文章を読みつつ、同時に、自分たちが取り組んでいるマーケティングの考え方や施策についても「クリティカル・リーディング」し、深いところにある無意識の前提を疑えということですね。

最後にひとつだけお話すると、私はワコールのマーケターである大薮範子さん(ワコール WEB販売事業部 ウェブストア営業部 ウェブストア営業企画課 課長)をすごく尊敬しています。大藪さんは基本的にマーケターとしての考え方がサービス・ドミナントロジックなんです。「サービス・ドミナントロジック・マーケター」と言ってもいいくらい。例えば、「いかにお客さまと握手できるかをいつも考えています」という言葉を言われたことがあるんですが、この言葉はすごく本質をついてるとおもうんですね。「握手」は、ひとりではできないじゃないですか。企業側だけでなく、顧客側も手を出さないとできないので、この双方が関わり合うということが、非常にサービス・ドミナントロジック的思考だな、と。要はマーケターがどのような姿勢で、社会・市場や自分たちの顧客やパートナー企業と向き合うかなんだと、大藪さんの話を聞いてて思います。

中村 ワコールは、UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)をドライブされているイメージですね。

高広 そう。ワコールのUGCは、顧客の声を聞くというより、顧客と握手するために取り組んでいるんですよ。

中村 UGCが生まれるような取り組みをされているだけでも、素晴らしい取り組みだと思います。

高広 そうですね。ユーザーをメディアとして使おうと考えているか、ユーザーが声を出しやすい仕組みをどのようにつくるのか、そしてそのユーザーとどのように「握手」するのか、できるのか。後者はサービス・ドミナントロジックの考え方が、その理論や概念はご存じなかったとしても、必然的に埋め込まれてるように思います。

中村 なるほど。今回は、価値共創においてより本質的なお話を聞くことができました。高広さん、本日はありがとうございました。
  
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