鹿毛康司、モダンエルダーを目指す #02

「魂にしか興味がない」若手なのに大御所と次から次へと仕事ができる秘訣を鹿毛康司氏が学ぶ

前回の記事:
モダンエルダーを目指す鹿毛康司、若手人気ライターりょかちと対談「若者とタッグを組むと凄いことが起きる」
 「モダンエルダー」という言葉を知っていますか? 若者に耳を傾けて新しいことを受け入れながら、エルダーとしての力も発揮する「職場の賢者」のことを指します。日本を代表するマーケターであり、クリエイティブディレクターでもある鹿毛康司氏がモダンエルダーを目指して、様々な若手にインタビューしていく企画です。

 鹿毛氏は、「過去うまくいったことも、今ではうまくいかないことがあります。自分としては、思考能力はまだまだ大丈夫だと思っている一方で、時代との何らかのズレを修正し続けなければいけないと、恐怖を感じているんですよ」と語ります。本連載では「若者に教えてもらう」をテーマに、時代とビジネスの勘どころを探っていきます。

 第2回は、グロービス経営大学院 マーケティング・PR シニアアソシエイトの中山景氏が登場します。同氏は、鹿毛氏が「大御所に何のためらいもなく会いに行く若手女子」と称するように、DMM.com会長の亀山敬司氏をはじめ複数の著名人と縁を深め、気軽に連絡を取ったり、ときには仕事をしたりしています。なぜそのようなことができるのか、「人の魂にしか興味がない」と話す中山氏に鹿毛氏が迫ります。
  
 

メディア露出を年間10本から250本に


鹿毛 今回のテーマは、「大御所に何のためらいもなく会いに行く若手女子」です。30~40歳の若手の男性は、大御所に会うことに躊躇するんです。私が「会いに行けばいいじゃん」と言っても、「いや、まだ段取りが…」と言います。

でも、まったく躊躇しない女性もいます。そうした「大御所に何のためらいもなく会いに行く若手女子」の中でも、わたしがその典型だなと思うのが中山景さんです。少し驚くくらい、大御所にためらいもなく会いに行くんです。まずは、今の仕事を含めて自己紹介をお願いします。

中山 グロービスという会社で、マーケティングチームに所属してPRの仕事をしています。個人向けサービスには、ビジネススクールでMBAが学べる「グロービス経営大学院」や、動画でビジネススキルが学べる「GLOBIS学び放題」などがあります。主にメディア取材などを通して、グロービスの認知拡大やブランディングを行っています。
 
グロービス経営大学院 マーケティング・PR シニアアソシエイト
中山 景 氏

静岡文化芸術大学デザイン学部卒業。2023年グロービス経営大学院(MBA)修了。 現在、株式会社グロービスにて戦略PRに従事する傍ら、カンファレンスの企画・ブランディング支援や独自の教育プログラム開発を探索している。大学時に日本の教育への疑問や課題を感じ、国内外のさまざまな教育を学び、セミナーやカンファレンスの企画運営を始める。自主企画の集客人数は3万人を超える。また、禅を用いた自己内観や組織開発のプログラムに出会い独学で研究を始め、グロービス経営大学院の在学中では「コンパッションと経営」をテーマにその有用性を検証。

鹿毛 中山さんは、メディア露出の獲得本数が半端じゃないよね。

中山 日経ビジネスや東洋経済、ログミーなどの記事を合わせて、年間250本くらい露出しています。以前はグロービス経営大学院には専任のPR担当がいなかったため、取材は依頼があったときだけの対応で年間10本ほどでしたが、そこから私が専任として担当して増やすことができました。

鹿毛 年間10本から250本への増加は本当にすごいよね。普通は「そんな数の露出を取れるのかな」って怖気づくんですよ。ただ、中山さんはそうこうしているうちに、いろいろな人に出会っているんですよね。
 

初対面のDMM亀山氏に「読んだ方がいい」と絵本をGIVEする


鹿毛 さて、本題に入りましょう。中山さんは日常的に大御所に会って何かをしているわけですよね。たとえば、誰と、どんなことをしましたか。
 
かげこうじ事務所 代表 マーケター クリエイティブディレクター
鹿毛 康司 氏

2020年、エステー クリエイティブディレクター(役員)を退任して現在にいたる。 早稲田大学商学部卒、ドレクセル大学MBA。現在はエステー、森永乳業、保険会社、塾会社など様々な企業のマーケティングとクリエイティブの支援をおこなっている。同時にグロービス経営大学院(MBA)教授として社会人学生にマーケティングを指導。2021年には著書「心がわかるとモノが売れる」で、マーケティングに必要なインサイトと人間理解論を実務家の視点で発表した。マーケティング立案、特に時代に新しいコンテンツマーケティングやファンマーケティングも得意とする。クリエイターとしてもCMプランナー/監督/コピーライター/作詞作曲などもこなす。2011年の東日本大震災直後に手がけた「消臭力CM」は好感度日本1位を獲得)。ACC Gold、マーケターオブザイヤー(MCEI)、WEB人貢献賞など受賞。

中山 たとえば、DMM.com会長の亀山敬司さんですね。

鹿毛 日本人資産家ランキング14位の亀山さんね。そもそも、どのように知り合ったんですか。

中山 そんな資産家とは気にしていませんでした(笑)。知り合ったのは、7年ほど前のことです。子供のころから、誰しもが平和を願っていても人と人との争いはなぜ絶えないのか、と考えていて。

鹿毛 そんな難しいことを考えていたんだ。

中山 小難しいこと考えていた時に、ある記事で亀山さんの発言に大変興味を持ちました。亀山さんは『ワンピース』を現実の世界に当てはめると「戦争は正義VS悪ではなく、正義VS正義だ」と、中学生たちに説いているんですよ。私の中で腑に落ちた瞬間でした。同じころ、お笑い芸人や絵本作家として幅広く活躍している西野亮廣さんが、絵本『えんとつ町のプペル』を出版されたので読んでみました。その内容と亀山さんの話している内容が私の中で交わったんです。それで、これは2人を繋げたほうがいいだろうと考えました。

鹿毛 キングコングの西野さんとは、まだその時点では出会っていないよね。それなのに、頭の中で2人がつながったんですね。

中山 はい。二人とも出会ったり話したことはなかったんですが、ビビっときました。それで絵本展で絵本を買って、その足でそのまま夜に亀山さんがいるらしい六本木のバーに行きました。

鹿毛 そのバーのことは、なぜ知っていたんですか。

中山 普通に噂でスタートアップの集積地だと聞いて、行こう!と思って。亀山さんとはFacebookでのつながりだけあったので、「行こうと思っています」と連絡したところ「いいよ」という返事がありました。そこでほぼ初対面で、亀山さんに『えんとつ町のプペル』を読んだほうがいいですよと、絵本を渡しました。

その後、たまたま亀山さんが西野さんの番組に取材で呼ばれたらしく、「あの時の絵本が役に立ったよ」と話をされていました。
  

鹿毛 そこから中山さんは亀山さんと仲良くされてますよね。それはおそらく亀山さんに、中山さんがしっかりと認められているからだと思います。

中山 本当ですか。変な人だと思われているんだと思っていました。

鹿毛 大御所に会いに行く人間のほとんどの理由は、「その人が有名だから」です。有名だから、会ったら何かおこぼれがあるのではないかと思うわけです。でも、中山さんは違うんですよね。

中山 私はTAKEではなく、常に自分が何かしらGIVEできることはないかという視点を持っています。逆に、その視点しかないですね。

鹿毛 だから、亀山さんと西野さんが自分の頭の中でつながったら会いに行く。そして絵本をGIVEしに行ったんですよね。

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