鹿毛康司、モダンエルダーを目指す #02

「魂にしか興味がない」若手なのに大御所と次から次へと仕事ができる秘訣を鹿毛康司氏が学ぶ

 

マーケティングと大きく共通する中山景の考え方


鹿毛 他にも、大御所とのエピソードはありますか。

中山 現在、私が勝手に妄想している企画があります。まだ実現するかはわからないのですが、あるチョコレート菓子ブランドとミガキイチゴを掛け合わせた企画で、コンセプトは、「ホントのきもちはかくしたい」です。
  

バレンタインデーは、もともとチョコレートメーカーがチョコレートを売るために話題にして、有名にしていきました。でも近年、義理チョコへの義務感に疲れてきたような空気感が出てきました。その空気を汲み取って、義理チョコを面白おかしく楽しいものに変え、新たなポジションを確立してきたチョコメーカーがあります。とはいえ、そろそろその波も一周し切った感じもあって。

一方で、ミガキイチゴは震災を経験した人々の不安や絶望感、悲しみに希望の光を与えるために生まれました。起業から12年を経て、ブランドとしてもネガティブな人々を元気にすることはやり切ってきた。岩佐さんはよく「甘酸っぱい世界を」と言っていて、そこから次のステージに向かう姿勢が私の中で浮かび上がってきました。「暗闇の中に指す一点の光を目指して向かうというよりも、これからは皆んなもっと自由に甘酸っぱく生きればいい」というインスピレーションを受けたんです。

そこで考えたのは、義理なのか本命なのか判断がつきにくい塩梅のチョコをバレンタインの時期に発売すれば、甘酸っぱい世界観がつくれていいのではないか、というアイデアです。それを岩佐さんに提案したところ、面白いね!となり、今度チョコメーカーの社長と2人を引き合わせるアポを取り付けました。自分自身も東日本大震災の日が誕生日なので、何か世の中に役に立てる存在になりたいですね。

儲かるとか儲からないとか、何が自分の得になるだとかの前に、魂みたいなものや社会の声に耳を傾けていると湧いてでてきて、何か伝えてアクションを起こさないとってなるんですね。私の場合そうやって動いたことはすべて自分の人生にとって意味があると、腹落ちがあるのでそのプロセスに生きています。

鹿毛 企画力と生き方がぶっ飛んでいますよね。中山さんは心と心の掛け算で企画をつくるという特殊能力を持っているんです。

つまり、中山さんはマーケティングでいう「インサイト」を知り尽くした人で、それを実際の企画に落とし込んでいるということなんですよね。中山さんはその心をどのように見つけられるようになったのですか。みなさんマーケターの人たちはそこを悩んでいるんですが。
  

中山 それは私が「魂」にフォーカスするからだと思います。自覚したのは20歳くらいで、好き嫌い、モチベーションなどの表面的に顕在化しているものには興味がなく、その人のもっと根源にある、よくわからない言葉にできない何かにずっと興味を持ってきました。

鹿毛 私もそういったことを本に書いたことがあります。人間の意識の95%は表面に顕在化しておらず、本人も知覚できていませんが、人間はそれに従って行動しています。マーケティングでは、それをきちんと捉えないといけないという話です。

中山さんの考え方はマーケティングと大きく共通するのですが、自身はマーケティングを勉強したわけでもなく、いきなりそこにたどり着いているんですよね。
  

中山 私は過去に本当に苦しくて絶望し、もう立ち直れないというような経験が何度もあって。それはどんなに他責にしようとしてもできなくて、自分で深く深く内省せざるを得なかったんです。

鹿毛 それは相当な経験だったんだね。そういう経験がないない人は、どのようにすれば人の魂がわかるようになると思いますか。

中山 私は大学生の頃から自分でセミナーやカンファレンスを開催していました。ただ、どれだけ集客しても成果を出しても、欠乏感があったんです。そのとき、ふと自分の幼少期の原体験や親との関係を見つめ直さなければ、この先の未来をつくっていけないのではないかと気づいたのです。どなたにも、なんらかの体験はあると思います。

鹿毛 過去の自分を見つめ直すというアプローチは、すごく正しいと思います。ところで、今、さらっと言いましたけど、大学生のときからセミナーやカンファレンスを開催していたんですね。

中山 はい、そうですね。浜松で学生起業しました。最初に、書籍を出版されている著名人に会って、聴衆を100人集めるので登壇してくださいとお願いしました。

鹿毛 いきなり、何の根拠もないのにお願いしたんですね。
  

中山 はい(笑)。100人集めるのだから100人以上の人に声を掛ければいいと思って、結果的に90人くらいは集めることができました。その頃は本当に浅い考えで、立地の良い場所にすれば人が集まるだろうと、会場費が高い場所を借りるために、何百社に連絡をとって協賛を募りました。

鹿毛 それを20歳の女性が取り組んでしまうのだから、すごいなあ。

中山 最初はそれでお金を稼ごうとは考えていなかったので、マイナスが出ないようにしていただけでした。しかし、徐々に登壇者が持っているプログラムを一緒に企画して販売するようになって、生計が立っていきましたね。それをグロービス経営大学院に入社する前までやっていました。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録