トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #11

脳科学が解き明かす、企業と消費者が「価値共創」する方法【ニューロサイエンティスト 辻本悟史氏】

 

「共創」は、人間としてごく自然なアイデア


中村 「共創」ついては、どのように考えていますか。

辻本 私は、「共創」は人間の本質のようなものだと常々考えています。脳の進化は集団のサイズと非常に大きな相関があり、集団サイズが大きくなり社会が複雑化していくと、脳もどんどんと大きく複雑化していくと言われています。これを社会的知性仮説と呼びます。

社会生活は、他者の気持ちや意図を理解し汲み取って相手にうまく行動してもらう必要があり、それはすごく高度な技術です。自分の感情は他者から影響を受け、同時に自分の感情が他者に影響を与えます。

この複雑な相互作用は「1対1」の関係から「1対集団」、「集団対集団」と拡大し、それが脳の発達に影響してきました。そのため、人間が他者と一緒にアイデアを考えて何かをつくり出すという行為は、ものすごく自然なことなのです。

歴史を振り返ると、人間は常に「共創」してきたと言えます。企業が何かを提案し、消費者から何らかのリアクションがあり、それに応じて企業が調整を加えるというサイクルも一種の共創です。それは人間と企業だけでなく、企業間でも同様の共創が行われてきました。個人の力だけでは限界があり、人間の脳の発達とともに共創は不可欠なものになっています。

中村 今の話を聞いて、第1回のインタビューで足立光さん(ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクターCMO)がお話されたことを思い出しました。足立さんはマーケティングにおいて「話題化」を重視していると仰っていました。
  

私なりの解釈では、足立さんが言う話題化とは単なるバズを超えた、良い評判を形成するお客様の声のことです。つまり、信頼化につながる話題化が共創ではないかと思います。コミュニケーションプランニングの段階で、メディアやSNSでどのように露出してほしいか、お客様に望む会話の内容を考えてから商品やサービスをローンチされています。もし計画から少しでもずれるときは、何か仕掛けをする必要があるとお話しされていて、とても面白いなと思いました。

辻本 人間は「後悔したくない」という意識を持っているため、評判を非常に気にしますよね。特に多くの情報が容易に得られる現代では、「ピア(自分と同じような立場や年代、環境の人)」の評価が非常に重要になります。

このため、うまく評判をつくり出せれば、消費者は商品やサービスを買いたくなってしまいますよね。企業が自社の商品やサービスの特性を説明するよりも、ピアからの意見のほうが説得力があります。評判を意図的に形成できれば、非常に効果が高いと思います。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録