社会変動を紐解き、マーケティングで時代を拓く #02
頻発する災害、マーケターに求められる「備え」とは?【LIFULL篠崎亮氏の提言】
消費者インサイトを読み、「備え」を築く
現在の災害の頻度と社会変動のスピード感は、これまで経験に無いものです。しかし、第1回でも述べたように、過去の災害時、人々を行動へと強く突き動かした「生存本能」や「つながり」への欲求は、これからの時代にも、ある程度は普遍的なものだと考えます。
マーケターは「備え」としてこういった消費者の気持ちを普段から洞察し、プロダクトと共に深く共感を得られるストーリーを世の中に提供して干渉を生み出していくことが大事だと思います。
私が携わるLIFULL HOME’Sには、「LIFULL HOME’S FRIENDLY DOOR」というサービスがあります。これは、住宅を得ようとするうえで障害のあるさまざまなバックグラウンドを持つ方々に対して理解があり、相談に応じてくれる不動産会社を紹介するものです。その中には「被災者フレンドリーな不動産会社※」というカテゴリーもあって、被災者が相談できる不動産会社を検索することができます。LIFULL HOME’Sは不動産そのものを保有していない情報サービスですが、普段からこうした不動産会社とのつながりがあることで、必要なときにユーザーに有益な情報を提供することが可能になります。この取り組みは、2022年の62nd ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSで総務大臣賞/ACCグランプリを獲得しています。
※対応可能な条件は各社によって異なりがあります
もう一つご紹介したいのは、「洪水ハザードマップ」です。LIFULL HOME’Sのサイトで地図から物件を探す際に、国土交通省のデータを基にした浸水想定区域図を地図に網掛けて、同時に確認できます。
国土交通省は2020年8月28日から、住宅・土地購入や賃貸などの契約前に、水害リスクを重要事項説明の一つとして説明することを不動産会社に義務付けました。「洪水ハザードマップ」は顧客自身も、安心とリスク管理を自ら行えるサービスとなっています。
『LIFULL HOME’S FRIENDLY DOOR』『洪水ハザードマップ』
実際、消費者にとっても災害に対する安心・安全は住まい選びの重要なポイントです。LIFULL HOME’Sが2023年に住替え検討者に対して行った大規模調査では、住まい購入検討層が住替えや建て替えの際に調べた情報で「災害に強いエリアかどうか(ハザードマップ)」は、5位に上がっています。高いお金をかけて購入した住宅や不動産を失うリスクを低減することは住まい購入検討層にとって重要なことだと捉えられます。
プロダクトが社会課題と向き合い、マーケターが世の中やユーザーとつないでいく。普遍的な消費者インサイトに応えてコミュニティの分断を超えられれば、事業が時代やトレンドをリードしていくことも可能だと考えます。