社会変動を紐解き、マーケティングで時代を拓く #02

頻発する災害、マーケターに求められる「備え」とは?【LIFULL篠崎亮氏の提言】

 

いざという時に必要な企業の「推進力」


 では、実際に災害が起こった時、企業やマーケターには何ができるでしょうか。まず思い浮かぶのは、支援物資の送達や寄付です。今回の能登半島地震でも、さまざまな企業が支援物資を届ける様子が報道されていました。

 災害支援で特に有名なのはアウトドア用品メーカーのモンベルでしょう。同社は2016年の熊本地震で、被災者に無料でテントや寝袋を貸し出し、話題を呼びました。今回も、支援物資を携えた「アウトドア義援隊」が大阪本社を出発したと報道されました。義援隊の活動は1995年の阪神淡路大震災を契機に始まり、国内外の被災地で直接的な支援として役立つのはもちろんのこと、アウトドアの知識や経験、道具が非常時にも役立つことを、多くの人に知ってもらうきっかけになり、ブランドの支持を高めることにつながっていくと思います。

 LIFULL HOME’Sでも先日、プロダクトチームが「能登半島地震に伴う住まいに関する支援情報のサイト」を立ち上げました。一時的な住まいをお探しの方のために、近隣各県など全国の自治体が提供する公営住宅などの被災者支援情報や、石川県内の民間賃貸住宅を活用した賃貸型応急住宅の情報へのリンクをご紹介しています。
 

令和6年能登半島地震に伴う住まいに関する支援情報サイト

 また、避難所に対しては、災害時にも簡単に組み立てられるシェルターとして開発した「インスタントハウス」を提供させていただきました。断熱性や耐久性に優れ、さらに耐震性、耐風性をあわせ持つことから、ワークスペースや宿泊スペースだけでなく医療救護室や休憩所、断熱を要する備蓄倉庫などにも活用できます。校庭、キャンプ場、駐車場など屋外に設置して避難所の拡張機能として利用いただくことが可能で、集団生活が困難な障がい者、乳児、要介護者、ペットなどのケアや、疾病予防にも役立てていただいております。
  
最短1時間で組み立てられる 「インスタントハウス」を石川県能登町に提供

 今回は多くの会社員が休んでいる元日に震災が起こりました。被災地や社会にどういった向き合い方ができるか、こういった支援に関する意思決定の素早さは、その企業が普段から、いかに非常時に発揮できる「推進力」を培っているかが反映されると思います。

 マーケター個々人は、ターゲットに消費させることに集中するだけでなく、消費者インサイトや将来のリスクを深く考え、時代の文脈を解釈して、いざというときに周囲や消費者の共感を得られるだけの高い洞察力を身に付けることが必要です。企業内外で連携して新たな文脈を作り出せるだけのポジションや影響力を持っていることも重要でしょう。

 災害や社会変動は頻発します。マーケターはそれを「非常」ではなく「日常の延長」と受け止め、意思を持って備えておくべきだと思います。そうすれば予測不能の事態が発生しても、激変する社会や消費者の動向を冷静に見極め、マーケティングを推進することができるのではないでしょうか。
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