トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #13

花王がマスマーケティングから大転換、生活者に寄り添う共創戦略の実態を聞く

 

共創による高速PDCAサイクルで、毎年の激しい変化に対応


中村 ここからは「価値共創」の中でも「共創」のお話について聞いていきます。共創については、どのように考えていますか?
  

小原 日焼け止めのマーケットサイズは、新型コロナの影響で6割に縮小し、またお客さまと話す機会も減ってしまいました。そこで、どのようにアプローチすれば生活者と一緒にモノづくりができるのかを考えた結果、生活者と3つの共創に取り組んでいます。

ひとつ目は、毎年変化の激しい日焼け止め市場で、生活者に満足していただける日焼け止めを提供するために取り組んでいる、高速PDCAサイクルです。というのも、日焼け止めは毎年、店頭の棚の3~5割を占める数の新製品が発売されます。そのために、我々は2年近く前から開発を行い、春に全国で発売するという流れで取り組んできました。完成した製品をマスに向けて届けるため、絶対に失敗は許されないわけですが、近年はコロナ禍や訪日外国人の減少、大雨などの予想外の出来事によって、生産や売れ行きに大きな影響が出ています。また、生活者の日焼け止めに対する意識も毎年のように変化していて、これまでと同じ2年前の開発計画では、それらの変化に対応できないという大きな課題がありました。

そこで我々は、ある程度の失敗を前提にテスト発売を行い、そこでいただいたお客さまの声をもとに改善を行って、翌年の全国発売で最大の成果を目指すという方法に変更しました。この高速PDCAサイクルによって、翌シーズンから製品のアップデートが可能になることはもちろん、テスト発売で多くのUGC(ユーザー生成コンテンツ)が得られることや、あらかじめニーズの大きさを把握して全国発売に向けた生産計画が立てられるということも、大きなメリットとなっています。

中村 それは面白い取り組みですね。たとえばSNSに投稿してもらうときのハッシュタグは、テスト発売の段階から決めているのですか。

小原 決めています。ただ、翌年の全国発売ではお客さまの声を参考にハッシュタグを変更するなど、コミュニケーションにおいても、まさに共創を行っています。

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