トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #14

花王「ビオレUV」の新戦略、3Sサイクル(Scene・SNS・Store)の真価

 

Sceneを考えたUGC戦略から大切にしている「実感」


中村 SNSのUGC戦略では、具体的にどのようなことをされているのですか。

小原 まず、最初にモノをつくるタイミングで、どのようなUGCを生みたいかというアウトプットイメージをつくります。もちろん、それとはまったく異なるUGCが生まれることも重要なポイントではありますが、まずはこういうUGCが生まれれば、Wowが自走するサイクルが回るのではないかという仮説のもとゴールを決めるんです。それを踏まえて、プラットフォーマーや広告会社の皆さんにオリエンを行っています。
  

中村 こういうUGCを生みたいというのは、つまりSceneのことですか。

小原 そうです、その使用場面を大切にしています。

中村 ちなみに、インフルエンサーを選ぶときは、何を見ていますか。

小原 インフルエンサーのすべての投稿を見て、UGCとPRの投稿ではどう違うのか、PRでも熱量を高く持って投稿しているか、過去に日焼け止めについてはどのような投稿をしているのかなど、非常に細かいところまでチェックします。

それを踏まえた上で、どういったコメントにどのように対応されているのか。あとは、エンゲージメントの数字などもチェックしています。投稿のエンゲージメントが高ければ、おすすめ投稿として表示される機会も増え、それが結果的にUGCにつながりやすくなっていきます。一方で、フォロワー数はまったく気にしていないですね。

中村 けっこう大変な作業ですね。

小原 正直、大変です。しかし、私自身がそこまで見ているからこそ自信をもってインフルエンサーとの取り組みができるのかなとも思っています。

中村 Storeでは、どのようなことを意識して展開されるのですか。

小原 UGCによって得た我々も気づかなかった生活価値を、販促物を通じて伝えるよう意識しています。あとは、何度も言うように「実感」を大切にしているので、テスターは必ず展開して、店頭という現場で見つけてもらえるように意識していますね。

中村 なるほど、Store(店頭)でScene(使用場面)を実感してもらうわけですね。価値共創という観点で、参考にしている企業やブランドはありますか。
  

小原 マツモトキヨシ・ココカラファイン様の店頭です。「Find your “!”(wow)」をスローガンに掲げられており、どのように生活者に驚きを届けるかということを大切にされています。モノへの愛も生活者への理解も深いので、本当に勉強になります。

中村 価値共創について学術的な論文を読むと、企業も顧客もお互いに学んでいき、その結果としてできた価値が共創だという考え方です。それを前提とすると、私は対話が大事だと思っているのですが、先ほどお話のあったオフラインのイベント以外に、お客さまとの対話を試みていますか。

小原 個人的に、小売りの皆さんとの対話をすごく大切にし、商談の場にはできるだけ行くようにしています。そこで勉強させてもらったり、こちらからの提案を通して同じゴールを描けるようにしたりということを意識しています。

中村 なるほど、小原さんもStore(店頭)を大切にされているんですね。今回は、価値共創において現場により近い部分のお話を聞くことができました。小原さん、本日はありがとうございました。
  
 
中村氏の対談後記
皆様、いつもお読みいただき誠にありがとうございます。
価値共創の連載も2年目に入り、実際の現場でどういう取り組みをされているかをお伺いしたく、今回は花王の小原様にお話をお伺いしてきました。3S(Store, Scene, SNS&UGC)というフレームワークも非常に汎用性が高いと思いますし、TVCMはその3Sをブーストするためのメディアであるという位置付けもとても勉強になりました。何より新しい戦略を取る上でもオフラインイベントでのロイヤルユーザーの方やインフルエンサーの方との対話・日々のUGCのチェック、そして日々お客様とお取り組みされている小売店様との取り組みなど、皆様の日々の業務にも活用できるヒントがいっぱいあったのではないでしょうか?今後も各マーケターの工夫などをお伺いしていく予定です。もしこの企業・ブランドに話を聞いてほしいというお声がありましたら編集部までご連絡ください。よろしくお願いいたします。
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