鹿毛康司、モダンエルダーを目指す #04

「マーケターよ、一度でいいから作詞しろ」 無印良品で本当の共創に挑む若き天才

 

SNSで、お客さまと真の共創をする


鹿毛 現在は、良品計画という会社で無印良品という強いブランドを担当していますね。

篠原 はい、これまでのキャリアの中では、会社の規模が一番大きく、扱っている商品数も約8000品目と非常に多いです。自分の力がどこまで役立つのか、チャレンジしているところですね。

鹿毛 良品計画では、どのような貢献をされているのですか。

篠原 当社は、無印良品が掲げる“3つのわけ”を原則とした徹底した商品づくりと、その裏側にあるお客さまの声を聞こうとする姿勢によって、お客さまに長く愛され続けてきました。その中で、私はモノをつくって売るというシンプルな構造にデジタルを掛け合わせて、お客さまの声を聞く仕組みと仕掛けを変革させていくことで貢献していきたいと思っています。
  

鹿毛 マーケティングでは、お客さまの声を聞くことが重要ですよね。でも、聞いたことをニーズ対応と言ってそのままマーケティング施策をすると、つまらない会社になるんですよ。お客さまは本当のところは何を欲しいのかはわかってないのだから、一を聞いて10を知らなければいけないわけです。篠原さんは、その辺りをどう考えて実践していますか。

篠原 お客さまのニーズではなくインサイトを探るようにしています。お客さまから頂いた声を翻訳して、本当に潜在的に欲しいと感じているモノやコトを考えて、商品をつくるメンバーに示唆を提供するということに取り組んでいます。

たとえば、「何色の靴下がほしい」というリクエストがあった場合、そのまま直球で対応するのではなく、なぜそれが欲しいと思っているのかという裏側を見つめます。そうすると「何かの服と合わせたい」「特定のシチュエーションで着たい」といった理由は出てきますが、それだけでなく、なぜその人がそういった服やシチュエーションを想起しているのか?何に期待しているのだろうか?と思考を巡らせると、今度はその人の「インサイト=本当に欲しいと思っているモノ・コト」が見えてきます。結果、そのお客さま理解が進むと、靴下の色だけでなく、そのインサイトに合った商品展開が他にもできるようになるわけです。こういったN=1のお客さまが他にもいらっしゃると分かれば、その商品はきっとお客さまの役に立つと思います。

鹿毛 ブラボー!惚れ惚れするなあ。それが大事なんですけど、それをやってのけているからすごい!!!ところで篠原さんの役割は、共創企画というチームのリーダーでしたっけ。

篠原 はい。お客さまやステイクホルダーと何かを一緒につくりあげることを企画するという方針なので、商品企画やコミュニケーション企画、キャンペーン企画、クリエイティブ企画など、さまざまなことに取り組んでいます。

鹿毛 世の中には、口では「共創」と言いながらも、まったく行動が伴っていない人が多い(笑)。そんな中、篠原さんは、まさにお客さまとの「共創」を実践しているんですよね。篠原さんは「共創の場」にどんなツールを使っているのでしょうか。
  

篠原 
主に、InstagramやYouTube などSNSが中心です。たとえば、アンバサダーさん(無印良品についてSNSやYouTube、ブログ投稿をしてくれているクリエイター)に、案件として対価をお支払いしない代わりにご自身の好きなトンマナで動画をつくってもらっています。収納に詳しい人であれば、無印のスタッキングシェルフ(ボックス型の収納棚)をどのように使って収納棚をつくるかを動画で提案してもらったりしています。
  
無印良品がアンバサダーさんとの取り組みで商品開発をしたとき、「無印良品 グランフロント大阪」がInstagramに取り組みを紹介した投稿

鹿毛 その動画を一緒につくっているのですか。

篠原 はい。すでに関係値がある人に「もしよければ一緒にコラボ動画をやりませんか」とお声がけして、どのようなテーマで実施するかをアンバサダーさんと話し合って決めた上で、こちらも必要なサポートを提供しながら、動画を制作してもらいます。それを、Instagramであれば、当社との共同投稿としてタグをつけて投稿してもらい、YouTubeであればアンバサダーさんのチャンネルに投稿してもらいます。

このときに重視しているのは、あくまでこちらは情報と機会の提供にとどまり、アンバサダーさんのトンマナで自由に取り組んでもらうことです。こちらから宣伝をお願いすることはないですし、商品がダメだと思ったのであれば、正直にダメだと言ってもらってもいいとも伝えています。
  

鹿毛 そもそも、アンバサダーが有名か無名かに関係なく、「無印について一緒に考えよう」という場をつくったんですよね。それが、InstagramやYouTubeというツールを使っているだけであって。よく、これらのツールを使えば何かが起きると錯覚している人がいるけれど、篠原さんはそうではなく、やるべきことがあって、道具を使いこなしていんですよ。ブラボー!

篠原 お褒めの言葉ありがとうございます。おっしゃる通りです。TikTokやブログなども活用していますが、メディアには、それほどこだわっていないです。

鹿毛 メディアがどうということではなく、「お客さまと一緒に無印について考えることで、自分たちの生活を良くしよう」という場をつくった。そこに、無印も参加させてくださいというようなスタンスですよね。

篠原 はい、私たちは場を提供する役回り。あくまでもアンバサダーさんが主体です。

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