最先端のマーケティング手法を探る~「VTuber」という新たなマーケティングの可能性~ #04

バーチャルタレントだからこそ超えられる壁、VTuberの活用方法とリスクとは

 

VTuberだからこそ、超えられる壁


 では、実際にVTuberタレントは、テレビやリアルイベントでどのように活用ができるのか?と思われるでしょう。ここはどの程度のクオリティを求められるかにもよりますが、基本的にはいろいろな依頼に対応することが可能です。たとえば、テレビ出演の場合、まず一番ライトなスタイルだとモニターに登場させるだけのものになります。これはインターネット回線さえあれば可能なので比較的容易で、コストもそこまでかかりません。
  
「ホロライブプロダクション」を運営するカバーが2023年に設立した新スタジオに新設されたモーションキャプチャースタジオ。ここでは、スタジオ全体に設置された200台以上のカメラで高精度のモーションを撮影することができる

 しかし、AR合成技術を活用してリアルの芸能人などと横並びになって出演するとき、あるいは単体での出演にしても、本当に綺麗な3Dの状態が必要となると、それ相応のスタジオや撮影の投資が必要になるため多くのコストが発生します。コラボする出演者がスタジオに行って撮影するよりも準備や費用が必要かもしれません。普段あまりVTuberを起用していない企業では、リアルの芸能人やタレントよりコストが安いだろうという感覚を持っている人もいるかと思いますが、それは異なる場合があるということです。

 もちろん、形式は多様なので、予算に合わせたご提案をすることは可能です。たとえば、テレビCMなどの撮影であれば、先述したリアルタレントの横に登場するような形でも、当社のスタジオであればAR合成で映像を制作できます。一方で、他で撮影する場合は依頼いただいた企業側の対応などの必要があり難易度が上がります。このようにVTuberタレントの活用とそのコストには、何を求められるかによってかなり幅があるのです。

 また押さえておいてほしいポイントとしては、 VTuberはバーチャルなタレントである以上、できることがある程度限られることです。ただし、これもパターンの問題であり、配信でコラボをするメリットがある一方で、制約やデメリットもありますし、アバターだからこそできること、逆にアバターであるゆえにできないこともあります。一方で、動画であれば、配信ではできないことが解決するケースもあります。別録りや編集で切り分けるなどの対応はできるので、細かな技術要綱は相談して決めることで解決できるケースもあります。

 ここまで読まれた方の中にはやはりVTuber起用はハードルが高いと思われた人もいるかと思うのですが、リアルなタレントとVTuberの違いを押さえていただければ、やり方次第でバーチャルの壁を越えることができると考えています。ここで具体例をひとつ紹介します。

 2020年12月に日清食品社と「謎肉牛丼」でコラボさせていただいたとき、「デジタル牛丼食事会」というイベントを行いました。ファンの皆様には事前に商品を手元に用意してもらい、配信を見ながら一緒に食べるというイベントです。同じ時間に、同じ空間で食べるという演出をすることで「食事会」として実現させました。
  
「ホロライブ」所属の「白銀ノエル」さんと、日清食品社の新商品であるカップヌードル「謎肉牛丼」がコラボし、「デジタル牛丼食事会」が開催された

 一緒に食事ができると認識してもらい「共感性」を提供できれば、購買行動につながります。このようにできないことはあれど、あまりそこに壁を感じたことはありません。むしろ捉え方によっては、VTuberは何でもできるとも考えています。なので、一度相談いただければよりイメージを湧かせていただけるのではないかと思っています。

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