トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #17

Z世代を取り込むためのマーケティング戦略とは?FinT 代表取締役の大槻祐依氏が考える「文脈」の重要性

 

若者に向けたマーケティングは、「文脈」が重要


中村 企業の人からは、若者やZ世代へのアプローチに苦戦しているという話をよく聞きます。そうした企業がFinTと一緒にSNSマーケティングに取り組むと、どのように変わるのでしょうか。



大槻 若者の思考を知れたり、若者に対してどこまで考えて訴求しなければいけないのかがわかったりすると思います。たとえば、若者は文脈がすごく大切でしっかりと理解するんです。要するに、なぜそのインフルエンサーをアサインしたかという背景が伝われば 伝わるだけ商品が売れるんですよ。

たとえば 、ずっと韓国アイドルを推してきたインフルエンサーが韓国アイドルのライブを観に行くという文脈に対して、ヘア商材のプロモーションを入れて、それを使ってめちゃくちゃ可愛くヘアメイクをして出かける様子をSNSで発信するとします。そうすると、視聴者はそれを真似したくなったり、そのインフルエンサーのファンが「推しのことを理解してくれてありがとう」と推し文脈でその商品を購入してくれたりするんです。

そのような文脈を考えずに、それっぽいインフルエンサーをアサインしてしまう担当者さんが多いことも事実です。ただきちんと文脈を考えれば、こんなにもユーザーが購入してくれたり、自分たちの伝えたいストーリーが伝わったりするのかということがわかるとも思います。

中村 以前、この連載でファミリーマートの足立光さんにインタビューしたときも、「コミュニケーションは何を言うか、どう言うか、誰が言うかの3つしかない」という話をされていました。いまの話は3つの中でも、「誰が言うか」という文脈を徹底的につくることが重要だと思ったのですが、そのような理解で合っていますか。
  

大槻 はい、まさにそうです。それがSNSやインフルエンサーマーケティングの特徴だと思います。ファンは、そのインフルエンサーがこれまでどのように頑張ってきたのか、どのようなストーリーを辿ってきたのかということを、InstagramやYouTube、TikTokなど複数のSNSから多角的に見ているからこそ、好きになっているんです。だからこそ、現代のコミュニケーションでは「誰」を読み込むことが非常に重要な世界になっているんです。

逆に言うとタレントさんは、どんな場面でも演じられるようにその人自身の色が消されてしまっているので、あまり文脈がないことも多いですね。

中村 なるほど、面白いですね。では、マーケティングでタレントさんは使わないほうがいいのでしょうか。

大槻 それはどういうことを発信したいかにもよると思います。テレビCMであれば、色がついていない人のほうがいいのかもしれませんが、SNS上で発信するのであれば、ストーリー性を持っている人のほうが文脈を理解しやすいでしょう。そのため、私はストーリー性のある人をおすすめしたいです 。
  

中村 大企業のマーケターからすれば、これまでのマーケティングとは違うなという印象を受けるでしょうね。

大槻 そうだと思います。

中村 利用者のコメントやクチコミはかなりチェックされるのですか。

大槻 すごくチェックしますね。SNSでどのように発話されているのか、どのような写真が投稿されているのか、それはどのような文脈で触れられているのか、といったことチェックしています。投稿を見れば、課題やチャンスに気づくことができるんです。

たとえば、商品がどこにあるのか見つけられなかったという投稿が大量にあった場合は、店頭の置き場所に課題があるとわかります。また、すでに商品の画像をSNSに投稿している人が何人もいれば、きっと他にも投稿してくれる人はいるので、もっと投稿しやすいように設計することもできます。「共創」という観点では、ユーザーの持っているものを拾って、それを一緒に形にするイメージかなと思います。

※後編 Z世代の文脈にどうすればハマる? アサヒビール「夜ピク」の事例からFinT 代表取締役の大槻祐依氏が解説 に続く
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