トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #24

AIのオススメを凌駕できるたった一つの言葉。それが「家族や友人からの言葉」【ファンベースカンパニー会長 佐藤尚之(さとなお)氏】

 

まずはファンに会って、ファンを知る


中村 これから「ファンベース」を取り入れたいと考えている企業やマーケターは、具体的に何からはじめるのがよいでしょうか。

佐藤 まず、「ファンベース」の事例は追わない方がいいと思います。どうしても先例を知りたくなる気持ちはわかるのですが、ファンベース施策って本当にそれぞれなんですよ。たとえば、同じ野球であっても、読売ジャイアンツや阪神タイガース、東京ヤクルトスワローズ、広島東洋カープ、中日ドラゴンズ、横浜DeNAベイスターズ、それぞれのファンはタイプが違うわけです。



だから、たとえば阪神タイガースのファンが喜ぶことを読売ジャイアンツのファンにしても喜ばないわけです。つまり阪神ファンで成功した事例は読売ファンには通用しない。野球の例は極端と思うかもしれませんが、たとえば大手ビール会社4社のファンタイプもそれぞれまったく違うんです。他社のファンに刺さる施策を自社のファンにしても全然ウケないどころか逆効果になったりするわけです。なので、他社事例を知るよりも、まずは自社のファンを知るために、自社のファンに会ってファンのインサイトをするところから始めてほしいと思います。

中村 野球ファンを例にして考えてみると、球団によってファンの違いがあるから他球団の真似をできないのを痛感しますね。ただ、ファンに直接会って話を聞こうとすると、「では、ロイヤルユーザーを集めてフォーカスグループインタビューをしましょう」となるケースが多い印象です。

佐藤 そういったインタビュー調査もあまり効果はでないと思います。ファンとはいえ心の奥底にある想いとか気持ちって気が付いていないことが多いんです。調査会社の方やファシリの方と話してもなかなか出てこないんです。だからボクは「ファンミーティング」をオススメしています。ファンをもてなすイベントではありません。ファンのインサイトを引き出すためにファン同士で会ってもらうんですね。ファン同士が一緒になるとすごく話が盛り上がり、記憶が掘り起こされて本音が出てくるのです。それを少人数でいいから開催するとファンの姿が明確に見えてきます。

あと、ファンをホテルとかに呼んでもてなすとかも考え直した方がいいです。ファンが一番喜ぶのは、その企業の「普通の会議室」だったりするんです。「あぁこういうところでいつも仕事してらっしゃるんですね!」ってすごく喜びます。そこに社員さんがいたりするともっと喜びます。ファンって社員と会うの本当に喜ぶんです。

もうひとつありがちなのは、ご意見を拝聴しちゃうことです。みんな聴きたがるんですよ。「この商品、どこを直せばもっと売れると思いますか?」みたいな改善策を。そういう訊き方をするとファンの心が批評・批判方向に傾いてしまいます。そうではなく、「ファンが好きなトコロ・愛しているトコロ」を聴くのがファンミーティングのコツです。悪いところを直すのではなく、イイトコロを伸ばしていくのがファンベース施策としてとても重要だからです。



中村 なるほど、面白いですね。また、ファミリー感もありますね。

佐藤 そうですね。地道な取り組みにはなりますが、そうやってファンに会っていくと社員のモチベーションや自信もすごく上がっていくんです。そういう過程を経て社員が一番のファンになっていくようなこともファンベース施策の重要な部分です。

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