社会変動を紐解き、マーケティングで時代を拓く #06

ウォルマート・メタの多様性後退、 「AI経済圏」との駆け引き【2025年マーケティングに求められる3つの視点】

 

視点②「AI経済圏」との駆け引き、マーケターの向き合い方


 2023年から2024年の初頭にかけて巨大ITプラットフォーマーのGAFAでは、レイオフが相次ぎました。その背景には景気後退や広告収入の減少などがありましたが、一方でAI投資については、人材と資本を向けるべき最優先事項として積極的な姿勢を持っていました。

 そして、2024年12月に米Open AIは「12 Days of OpenAI」の中で高度な推論能力を持つ新モデル「o1」を発表、Googleも「Gemini 2.0 Flash Thinking Experimental」をリリースしました。いずれも「思考プロセス」を示す機能を採用しており、これを受けて、自律的な回答を話すAIエージェントの解像度が上がってきていると思います。

 その進化の中でも、リサーチ領域でのAIの進化は多くのマーケターが直面する課題になると予想されます。すでに普段のGoogle検索でもAIによる回答結果を見ることが多くなり、検索結果の2ページ目以降を開く人は減っているでしょう。AI検索エンジン「Perplexity」は2024年11月、検索した商品をワンクリックで購入できる「Buy with Pro」を発表しており、人材紹介のIndeedや、amazonが買収した食品スーパーのWhole foods Marketと広告テストを開始しています。

 今まで、検索結果から独立した事業ドメインの世界までたどり着いてくれていた人が、AIによる回答の中で最適な商品を選び、購入する世界がすでに始まっており、それは人材や食品などの特定領域に波及していくのです。また、米国のアマゾン・フレッシュ・ストアでは店頭に音声アシスタント「Alexa」が導入されていることが示すように、リアルなショッピング体験においてもAIエージェントとの連携が進化していくかもしれません。

 私がマーケティングに従事するLIFULL社およびLIFULL HOME'S事業でも、開発チームがリードして生成AIを活用した多角的な取り組みを進めており、特に自社開発AIによる「おとり物件」と呼ばれる募集終了物件の検知の取り組みにおいては高い成果をあげています。また、2024年8月には不動産ポータルサイト(賃貸物件)で「物件鮮度No.1」を獲得して、不動産を調べる多くの人に信頼いただける情報ソースとして、サービスの価値を向上しています。
 
不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」は2024年8月に不動産ポータルサイト(賃貸物件)で「物件鮮度No.1」を獲得(※調査方法:電話/調査期間:2024年6月20日~6月24日/調査概要:物件鮮度調査/調査実施:株式会社プラグ/比較対象企業:不動産ポータルサイト5サイト)

 これらの変化は、単に消費チャネルが変わるといった単純なものではなく、事業が消費者に見出される「経済圏」そのものの変化を示します。端的に言えば、事業がどのAIに信頼されて、回答の中で生きられるか。そしてこの変化を前に、マーケターは事業や商品が消費者に手に取ってもらいやすく存在するために、いかに日々の業務をアップデートさせて新しい経済圏に適応できるかが重要になります。

 一方、これとは逆の視点で、事業ドメインの独立性を磨くことも引き続き重要であると考えます。なぜなら熱量を持ってサービスや商品を「指名」してもらえることは、AIによる回答やレコメンドに左右されず、ヒトを惹きつけるということに繋がるからです。

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