鹿毛康司、モダンエルダーを目指す #08

顧客と一番深くつながれる「共感」の正体とは?【鹿毛康司氏・石根友理恵氏】

 

「共感」の音叉を広げる


石根 今日は取材というよりもカウンセリングみたいなので、ついでにお聞きしてもいいですか。

鹿毛 もちろん、いいですよ。

石根 ありがとうございます。誰しもさまざまな場面によって、自分を演じているところがあると思いますが、それってバレているのかなという思いがあって。バレるなら演じないほうがいいのかなと思い始めているのですが、鹿毛さんはどう思われますか。
  

鹿毛 家を出た瞬間、誰しも演じていますよね。だから、僕は演じることと生きることは一緒なのではないかと思っています。ただ、本心で思っていることが違うときは、バレないようにしなきゃいけないよね。

あと、これはSNSも同じなんですが「出さない、見せない領域」を決めることも生きていく上では大切ですよね。ところが石根さんは、すべて見せているように思えて気になって。だから、最初にどうして再婚まで公開するのかなと質問したんです。

石根 本当ですね。私の生き様を見せているつもりはありませんでしたが、なぜすべてを見せてきたのかを考えると「共感」というキーワードがあるからかもしれません。メディアに出させていただくにつれて、お客さまから「共感しました」という言葉をいただくことが増えました。その中で「共感」がお客さまと一番深くつながれるんだということが明確になりました。

だから、どこかで共感してもらうための行動を無意識のうちにやっているのかなと思います。その中で、自分自身の武器として勝負できるのは生き様だと考えているんです。

鹿毛 マーケティングの研究者であるケビン・レーン・ケラーは、顧客視点のブランドエクイティ論として、「ブランド・レゾナンス・ピラミッド」を提唱しました。そのピラミッドの中で、共感は一番上に位置しています。もっとも大切で最も難易度の高い領域です。石根さんの言う「共感」はどういうものなんでしょうね。

石根 よくお客さまの声でいただくのは、「応援しています」という言葉です。それがすごくうれしいんです。でも、これは応援であって共感ではないか…。

鹿毛 いや、それは「共感」しているから「応援しています」という言葉になるんですよ。でも、そのままの意味で応援していると言っているわけではなくて、気持ちをうまく言語化できないから応援していると言っているだけです。お客さまが石根さんの何かに振動して言っているわけですよね。

石根 たしかにそうですね。わたしがやっていることの何に共感してくれているんでしょうね。

鹿毛 それが明確になったら、もっと共感を広げることができるでしょうね。

石根 鹿毛さんは共感をどう説明しますか。

鹿毛 例え話でいいですか。石根さんは、音楽をやったことはありますか。
  

石根 ピアノなら、あります。

鹿毛 いいですね。じゃあ、たとえば、D#の音叉があったとします。その音叉を響かせて、こっちで響いている人がいる、あっちでも響いている人がいる、その人たちが集まれば、それなりの人数になるというイメージです。石根さんがやっているそれがお酒で響かせられればよいですよね。石根さんならではの音叉を作って広げていくイメージですね。

石根 なるほど。

鹿毛 大袈裟かもしれませんが、世界を制してください。

石根 もう私が中心みたいなイメージですね。私がいいと思うものを突き詰めて、それが響く人に響かせる。

鹿毛 そう。そもそも石根さんがいいと思わないものは響きませんよ。石根さんがいいと思ったものを本気で取り組み、提供する。石根さんの価値に響く人を仲間にする。石根さんの音叉にみんなが寄ってたかって響いて、行動を起こす。そんな組織が生まれたら素敵ですね。

石根 なるほど。そんな組織をつくれたら理想ですね。

鹿毛 起業家の特権は、自分が音叉になってもいいことではないかな。石根さんとお話ししていると、そう思えてきました。

石根 やってみますね。すごく良い話をたくさんいただきました。

鹿毛 とんでもないです。こちらこそ、エルダーとして本当に勉強になりました。
  
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