鹿毛康司、モダンエルダーを目指す #09
鹿毛康司氏がリスペクトするZ世代・今瀧健登氏の成功の秘訣― ジョブ型雇用の実践にみる「やるかやらないか」で生まれる差
「Z世代っぽい」だけの企画は明確にわかる
鹿毛 次は、Z世代に向けた企画について教えてください。Z世代のインサイトを的確に捉えている企画と、そうではない「Z世代っぽい」だけの企画では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
今瀧 明確に違うのですが、的確に言葉にするのは難しいですね。
海外で見かける日本食レストランの看板を例にするとわかりやすいかもしれません。たとえば、日本食レストランの看板にひらがなのような文字がたくさん書いてあると、日本語を母国語としない人から見れば、日本らしい雰囲気だと感じられるかもしれません。しかし日本人が見れば、実際にはきちんと読めなかったり言葉が成立していなかったりすることを見抜くことができますよね。日本人であれば、その看板を見て日本人が関わっているのかそうでないのかが明確にわかります。

Z世代向けの企画でも、これと同じ現象が起こっています。Z世代ではない人が見ればZ世代っぽいと感じられる企画でも、Z世代には、この企画にZ世代は関わっていないということが明確にわかるんです。
鹿毛 たとえば、何が違うのでしょうか。
今瀧 たとえば「若者よ」という言葉が使われていると、Z世代向けだけれど、Z世代の人がつくったものではないなと感じますね。Z世代の人は自分たちのことを「若者よ」とは言わないですから。
一方、たとえば「自分らしさ」という言葉が入ってくると、Z世代っぽいなと感じますね。
鹿毛 それは面白いですね。他に思いつくものはありますか。
今瀧 とりあえず縦型動画の映像を制作しSNSでの拡散を狙った施策や、Z世代に人気があるという理由だけで特定のタレントを起用することなどが挙げられます。
また、「多くの企業がインフルエンサーを起用しているから、うちの会社でもインフルエンサーを起用したい」などですかね。周りの会社が起用しているから、というのは理由にならないと思います。
鹿毛 Z世代って、他の世代と何が違うのでしょう。そもそも、本当に違うのですかね。
今瀧 全然違いますね。まず、教育が違います。みんな違ってみんないいという、多様性をすごく重んじた教育を受けてきているので、最初からその価値観を持っています。また、少子高齢化でどこも人手不足という社会の状況から受けている影響も色濃くあるかなと思います。
鹿毛 なるほど。ちなみにZ世代って、特別に礼儀正しいということはありますか?
今瀧 それはケースバイケースですね。Z世代はまだ若いので一括りに礼儀正しいというのは怪しいですが、30年後ならこの世代は礼儀正しいと言えるのではないかと思います。
鹿毛 先日、今瀧さんとイベントで一緒になって、その後に食事をしたんですよね。僕は三次会まで行って先にタクシーで帰ったのですが、帰り際に今瀧さんはタクシーが見えなくなるまでお辞儀をしてそれを見送ってくれていたと聞きました。それを聞いたときに、彼が成功するのはこういう部分なんだなと思ったんです。
今瀧さんはめちゃくちゃ書籍を読んでインプットしているし、思考しているし、実践しているし、礼儀正しいし、ひとりの人として大前提となることを真面目に取り組んでいるから、成功しているということです。こういう若者を僕たちはリスペクトして、教えてもらわなきゃいけないですよね。

僕もジョブ型という働き方については、書籍を読んだこともあるし、知識としては以前から知っていました。しかし、結局はできない理由を探してしまい、行動に移すことができなかったのです。「実績がないと難しいのでは」「現場の肌感覚がないと無理だろう」などと、根拠のない言い訳を心の奥で並べて、挑戦から逃げていた。その守りの姿勢を、今ものすごく反省しています。
結局のところ、問題は「知っているか」ではなく、「やるか、やらないか」です。そういった意味で、知識を実践に移されている今瀧さんの姿勢を、心からリスペクトしています。
※後編 心を動かす「エモマーケティング」の本質とは? Z世代ビジネスパーソン・今瀧健登氏が語るマーケターに必要な「プレゼント思考」 へ続く
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