PHOTO | 123RF
新・消費者行動研究論 #07

商圏は「距離」ではなく「移動者」、モバイルから新たな顧客が見えてくる【慶應義塾大学 清水聰】

移動者を捉えられれば、店舗にもチャンスがある

 個人情報保護の観点から、具体的に誰がその場所にいたのかまではわからないが、集計値として性別・年齢・住んでいる地域(どこから来ているのか)はわかるので、たとえば「ハロウィンの時に渋谷にいた人の男女比、年齢構成、どこから来た人が多いのか」というようなことは簡単に把握できる。

 また、夜の時間帯のデータは、繁華街を除けはほぼそこに住んでいる人のデータなので、その地域の移動人口だけではなく、従来の商圏分析で用いた住民数も把握可能である。

 実際、ある地方都市の小売店の売上データと、このモバイル空間統計を合わせると、興味深い結果がみえてきた。

 食品スーパーの場合、移動人口の大小よりも店舗の大きさの大小の方が来店者1000人あたりの売上には影響していた。これに対して、日用品、耐久消費財、そして衣服類は、移動人口の多い地域にある大型店の方が、移動人口の少ない地域の大型店の2~3倍の売上があり、店の大きさよりも移動人口の方が影響力は大きかった。



 食品は住んでいる人の数に依存しているのに対して、日用品、耐久消費財、衣服は、移動してくる人の数が大事なわけで、商圏がかなり広いということが言えるだろう。

 特に面白いのが「生花」の売上であり、これは移動人口の少ない地域にある大型店よりも、移動人口の多い地域に立地する小型店の方が、50%程度売上は高かった。郊外の大きな生花店よりも、銀座の一坪の生花店の方が売上は大きい、ということであり、さもありなん、である。

 リアルの店舗はネットの店舗に押されて元気がないが、このように「商圏」ではなく「移動者」で考えると、まだまだ顧客を掴めるチャンスがあるように思える。時間帯ごとにより細かいオペレーションが可能になれば、なおさらだ。
 
続きの記事:
銀座という街は、どこが優れているのか。【慶應義塾大学 清水聰】
他の連載記事:
新・消費者行動研究論 の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録